体の各部に分布し、後述するようなさまざまな作用をもつ細胞の総称。細網内皮系の名称は1924年にドイツの病理学者アショフによって提案され、現在も広く用いられているが、その概念は研究方法の発展などによって大幅に変わってきている。アショフによって最初に考えられた細網内皮系とは、1893年ロシアの動物学・病理学者メチニコフが「大食細胞系」と名づけたすべての大食細胞に、肝臓、脾(ひ)臓、骨髄内の洞様毛細血管(類洞とよぶ)の壁に配列する食作用能力をもつ特殊な内皮細胞を含めたものであった。これらの細胞は類似の貪食(どんしょく)性があり、トリパン青のような体染色染料を細胞体内に取り込み、貯留する性質があることから同一集団としたものであった。しかし、その後の研究によって細胞発生源が明らかにされると、細網内皮系のうち、内皮細胞成分以外の細胞系は「単核食細胞系」として統合されるようになった。この単核食細胞系は、血液中の単球とその前駆細胞(骨髄内に存在する)に由来するもので、体中の結合組織内の組織球、大食細胞、肝臓の星(せい)細胞(クッペル細胞)、肺臓、リンパ節、胸膜、腹膜組織内の大食細胞、その他の器官の組織大食細胞など、多種類の細胞系を含んでいる。これら細胞系の特徴は、同じ発生起源をもち、血液の単球を経てできるもので、旺盛(おうせい)な食作用があり、血液やリンパ内の異物を処理したり、生体内のタンパク質・脂肪などの物質の貯蔵、同化・異化作用による新陳代謝に関与し、細胞膜上に免疫グロブリンに対する受容部位をもっている。
[嶋井和世]
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…なかでもマクロファージは最も活発に貪食作用を示す細胞で,その大部分は血液中の単球に由来することから,マクロファージと単球とを合わせて単核細胞貪食系mononuclear phagocytic systemと呼ばれている。血液以外から由来するマクロファージは,組織に存在する組織球,肝臓のクッパー星細胞,肺の肺胞マクロファージ,リンパ節や脾臓にあるマクロファージおよび胸膜や腹膜上皮由来のマクロファージなど,いわゆる細網内皮系reticuloendothelial systemといわれているものに属する細胞である。
[炎症の種類]
炎症は,その持続期間によって分類すると,ほぼ1ヵ月以内に消える急性炎症acute inflammation,数ヵ月から数年にわたる慢性炎症chronic inflammationに分けられ,その中間の炎症は亜急性炎症subacute inflammationという。…
…骨髄では各種の段階の造血細胞が多い。細網組織の毛細血管やリンパ洞の内皮も細網細胞と同じように組織球(大食細胞)に化して異物をたべこむと考えられ,細網内皮系retikuloendotheliales systemとしてとりあつかわれてきたが,現在では細網細胞も内皮も異物をとりこむ能力はほとんどないと考えられている。細網組織の基質は疎性結合組織の基質と同じと考えてよく,多糖類や糖タンパク質が存するほか,組織液が流れている。…
※「細網内皮系」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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