改訂新版 世界大百科事典 「細網組織」の意味・わかりやすい解説
細網組織 (さいもうそしき)
reticular tissue
細網繊維reticular fiberが網を形成し,網目に細網細胞reticulum cellその他の結合組織細胞が散在し,基質と組織液が存する組織をいう。リンパ節,脾臓,肝臓の洞様毛細血管の外側(ディッセ腔Disse space),骨髄などがこれに属する。細網繊維は膠原繊維(こうげんせんい)のとくに細いもので銀に染まる。上述の器官を渡銀染色すると細網繊維の網をみることができる。細胞成分として種々の結合組織細胞がみられるが,共通なものは細網繊維を作ったと考えられる細網細胞である。かつては細網繊維は膠原繊維とは別ものと考えられたことから別の名がつけられたが,現在では本質的に同じであると考えられているので,細網細胞を一種の繊維芽細胞とみなすことができる。以前はこの細網細胞が組織球となって異物に対する食作用を発揮すると考えられていたが,現在では細網細胞と大食細胞(マクロファージ)とはまったく別であるとの考えが強い。細網組織に存するその他の細胞は,器官によっていちじるしく異なる。リンパ節では大食細胞,リンパ球,形質細胞などが多い。脾臓では大食細胞,リンパ球,種々の血球細胞などが多い。また肝臓のディッセ腔には伊東細胞がみられる。骨髄では各種の段階の造血細胞が多い。細網組織の毛細血管やリンパ洞の内皮も細網細胞と同じように組織球(大食細胞)に化して異物をたべこむと考えられ,細網内皮系retikuloendotheliales systemとしてとりあつかわれてきたが,現在では細網細胞も内皮も異物をとりこむ能力はほとんどないと考えられている。細網組織の基質は疎性結合組織の基質と同じと考えてよく,多糖類や糖タンパク質が存するほか,組織液が流れている。これをとくに脈管外通液路と呼ぶ人もある。細網繊維が膠原繊維であり,細網細胞が繊維芽細胞ならば,細網組織を一種の疎性結合組織と考えても差支えなかろう。
執筆者:藤田 尚男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報