人類の滅亡までの残り時間を象徴的に表す時計。核戦争や原子力利用の失敗などによる危機を警告する目的で、人類が滅亡する時間を午前0時とし、それまでの残り時間を「0時まで何分」という形で示す。世界終末時計ともいう。アメリカのシカゴ大学で、終末時計のオブジェが管理されている。アメリカの科学誌『The Bulletin of the Atomic Scientists(原子力科学者会報)』が、1947年に表紙に「残り時間7分」として終末時計を初めて発表した。以降、核問題による緊張だけでなく、地球環境問題なども時刻の決定に反映させて、残り時間を毎年公表している。
当初、残り時間7分から始まった終末時計は、アメリカとソビエト連邦による冷戦下の1953年には最短の残り2分になったが、両国が部分的核実験禁止条約を締結したことで、1963年には残り12分まで回復した。その後、冷戦が終結し、ソビエト連邦が崩壊すると、時計は残り時間17分まで戻った。しかし、インドとパキスタンの核兵器保有宣言やイランの核開発などといった問題が相次いで起きたため、アメリカ大統領オバマによる核廃絶方針の表明にもかかわらず、時計の針は2010年に残り6分まで進んだ。さらに、2012年1月には、世界に核兵器拡散の懸念が高まったうえに、福島第一原子力発電所事故の影響も加わって残り5分となり、2013年、2014年も残り5分のままである。
[編集部]
(南 文枝 ライター/2017年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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