組織暴力犯罪(読み)そしきぼうりょくはんざい

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

組織暴力犯罪
そしきぼうりょくはんざい

暴力組織の威嚇力を背景に行われる犯罪。暴力組織とは、集団的または常習的に暴力的不法行為を行い、または行うおそれのある組織または集団をいう。アメリカでは、マフィア、シンジケート、ラケッティアなどとよばれる。日本では、博徒、的屋(てきや)、第二次世界大戦後現れた愚連隊などとよばれてきたが、現在はその区別が薄れて一般に暴力団とよばれ、また、組織的、集団的に行使される暴力を組織暴力とよんでいる。
 以下では、日本における組織暴力犯罪について解説する。[須々木主一・小西暁和]

組織暴力の実態

いずれもピラミッド型の階梯(かいてい)構造をもつ組織で、構成員には、暴力の手段としての正当性を肯定する独特の価値観がある。一般社会に適応できずドロップ・アウトした者で、たとえば犯罪をした者を受け入れ、しかも受刑体験が組織内での地位の上昇をもたらしうるので、刑罰が痛手になることがなく、それを恐れないのが特徴である。ただし、下層の構成員の入れ替わりは激しいといわれる。
 組織を維持し、構成員を養う資金源として、風俗営業、金融、土建業などの合法的な事業を表看板に、その経営も多角化・知能化しており、政治団体を仮装するものも現れているが、実際には、覚醒(かくせい)剤の密売、賭博(とばく)、売春、のみ行為など非合法な活動による収入がこれを支えている。また、1970年代後半ごろから、交通事故の示談や債権取り立て、倒産整理など、民事事件への進出(民事介入暴力)が顕著である。さらに、2000年代に入り、地方公共団体等の行政機関やその職員に対して不当な要求行為を行う行政対象暴力も拡大してきた。罪種は、覚せい剤取締法違反、傷害、窃盗、恐喝、詐欺の順で多い。また、組織の統合・広域化に伴う暴力団どうしの抗争や組織の内部抗争で一般市民が巻き添えになることも多く、全体として、一般市民や企業が被害者になるケースが少なくない。しかし、市民は仕返しを恐れて被害を届けず、企業は必要悪としてこれを利用する傾向があることから、組織暴力犯罪には表面化しない件数がかなりあるとみられる。[須々木主一・小西暁和]

暴力団対策

警察による暴力団対策は活発に行われ、起訴率は高く、宣告刑が重く、刑の執行率も高いなど、厳しい措置が講じられている。この点、従来の暴力団対策は、個別の構成員に対する規制に限られていたが、その後、暴力団そのものを規制の対象とする方法へと変化してきている。日本では、1991年(平成3)に「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(暴力団対策法)が制定され、都道府県の公安委員会が指定した暴力団の団員に対し、暴力的要求行為等の禁止、禁止行為への措置命令(中止命令、再発防止命令、少年脱退措置命令)、事務所の使用制限命令などを行うことができるようになった。その結果、暴力団の解散・壊滅が急増し、暴力団からの離脱を希望する者も増加することになり、一応の成果が得られた。これと並行して、法務省、警察庁、そして日弁連は企業の暴力団との絶縁の支援に乗り出しており、暴力団抗争の被害にあった市民が、抗争参加者の属する暴力団の幹部に対して民事上の使用者責任を追及する裁判を提起し、その要求が認められる場合も増えてきている。しかし、暴力団は残存してさらに巧妙な自衛措置を講じるわけであるし(たとえば暴力団出資の実業家すなわち企業舎弟の問題)、組織離脱者のすべてが、ただちに「善良な市民」になりきれるものでもなく、課題は多い。
 1999年には、薬物・銃器犯罪等で深刻化する組織犯罪の取締りを目的として組織犯罪対策三法が制定・公布された。「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(組織的犯罪処罰・犯罪収益規制法)は、一定の種類の組織的な犯罪に関する刑の加重、一定の犯罪行為により得た収益による法人等の事業経営の支配を目的とする行為および犯罪収益の隠匿・仮装・収受(いわゆるマネー・ロンダリング)の処罰に関する規定、没収の拡大や没収の保全手続の新設を内容とする。「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」(通信傍受法)は、組織的、密行的に行われる一定の種類の犯罪の捜査に関して、裁判所の発する令状により、犯罪の実行に関して行われる電話その他の電気通信を傍受することを認める。そして、刑事訴訟法の一部改正では、刑事事件の証人等の保護を規定している。また、2006年(平成18)に制定された「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(刑事収容施設法)」により、刑事施設では、特別改善指導として暴力団員の受刑者に対する「暴力団離脱指導」が実施され、警察と協力しながら離脱意志の醸成を図る指導等が行われている。さらに、保護観察でも、暴力団員などを「暴力団関係対象者」類型とし、この類型に認定された保護観察対象者には、暴力団からの離脱や就労など生活の安定に向けた指導や援助を積極的に実施している。[須々木主一・小西暁和]
『加藤久雄著『組織犯罪の研究――マフィア、ラ・コーザ・ノストラ、暴力団の比較研究』(1992・成文堂) ▽法務省刑事局刑事法制課編『基本資料集・組織的犯罪と刑事法』(1997・有斐閣) ▽遠藤誠編著『解読・組織犯罪対策法』(1997・現代書館) ▽日本弁護士連合会民事介入暴力対策委員会編『注解 暴力団対策法』(1997・民事法研究会)』

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