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通信傍受法

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ASCII.jpデジタル用語辞典の解説

通信傍受法

犯罪捜査のために、警察機関による通信の傍受を認めた法律。「組織的犯罪三法」として、1999年に公布、翌2000年に施行された。背景には、オウム事件による組織的犯罪の危険が世間に認知されるようになったこと、警察機関はテロをはじめとする組織的な犯罪に通信の傍受が不可欠であるとの意見が強まったことがある。だが、憲法に通信の秘密の保障が明記されている以上、この法律は憲法に抵触する可能性があるという批判が立法時からなされている。憲法との摩擦を減らすため、傍受が可能な事件は組織的な殺人事件、薬物・銃器の取引に限定され、地方裁判所の許可なしには傍受ができないという制限もあるが、それでもプライバシーを無視した人権侵害に変わりはないという見方が根強い。

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デジタル大辞泉の解説

つうしんぼうじゅ‐ほう〔ツウシンバウジユハフ〕【通信傍受法】

《「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」の通称》組織的な殺人、銃器や薬物の取引などの捜査において、捜査機関が犯人間など犯罪にかかわる通信の傍受を必要とする場合の要件、手続きなどを定める。平成12年(2000)8月施行。盗聴法。

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百科事典マイペディアの解説

通信傍受法【つうしんぼうじゅほう】

犯罪捜査のため警察や検察に通信の傍受を認める法律。1999年8月に成立。盗聴法とも通称。薬物・銃器・集団密航・組織的殺人の4種類の重大犯罪に限って,捜査目的のための通信傍受を認めるもので,同月に成立した〈組織的な犯罪の処罰・犯罪収益マネー・ローンダリングなど)の規正法〉〈改正刑事訴訟法〉とともに組織犯罪対策法案のひとつ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

通信傍受法
つうしんぼうじゅほう

正称「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」。 1999年8月成立。組織犯罪捜査のため,電話やファクシミリ電子メールなど通信の傍受を捜査機関に認める法律。組織的殺人,薬物・銃器の不正取引,集団密航にかぎり,ほかの手段では犯人の特定や犯罪の解明が困難な場合にのみ,通信の傍受を認める。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

通信傍受法
つうしんぼうじゅほう

組織的な殺人、集団密航関連犯罪および薬物・銃器の不正取引関連犯罪の捜査のために、これら犯罪の実行に関連して行われる電話など有線を経由する電気通信の傍受を認めた法律。1999年(平成11)8月18日公布(2000年8月15日施行)の「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」(平成11年法律137号)の略称。電話等の通話内容を通話当事者に無断で聴き取る行為は傍受ではなく盗聴とよばれるのが通常だったので、この法律も盗聴法とよばれることがある。[川英明]

通信傍受法制定の経緯

通信傍受法案は、組織犯罪対策関連三法案として、組織犯罪処罰・犯罪収益規制法案や(証拠の閲覧および証人尋問に際しての証人等の安全保護を図る措置を規定する)刑事訴訟法一部改正案とともに1998年3月に第142回通常国会に上程された。しかし、とくに通信傍受法案に対して世論の強い批判があり、そのためにいったん三法案は継続審議となったが、その年の参議院選挙で自民党が敗北するという政治情勢の変化があり、翌1999年の第145回通常国会の審議過程で、自由民主党、自由党(当時)および公明党・改革クラブの三会派からの共同提案による修正案(通信傍受の対象犯罪を縮減し、令状請求権者や発付権者を限定するなどの修正案)の下に、通信傍受法案は可決された。
 もともと三法案は法務大臣の諮問第42号に対する1996年9月の法制審議会の答申「組織的な犯罪に対処するための刑事法整備要綱骨子(案)」に基づいて作成されたものであった。諮問第42号とは「最近における組織的な犯罪の実情にかんがみ、早急に、この種の犯罪に対処するため刑事の実体法及び手続法を整備する必要があると思われるので、(中略)その整備要綱の骨子を示されたい」というものであった。ここでいう「組織的な犯罪の実情」とは、暴力団等の犯罪組織がかかわる薬物や銃器の密輸や密売あるいは暴力団の抗争事件、中国の蛇頭(じゃとう)のような外国人犯罪組織がかかわる集団密航犯罪、オウム真理教(現Aleph(アレフ))の地下鉄サリン事件のような大規模な組織的形態の凶悪犯罪の登場により市民生活の平穏と社会の健全な発展が脅かされる状況にあるということであり、そうした組織的犯罪に対して刑罰法規や捜査手段が十分には整備されてはおらず、その充実整備を図る必要があるというのが組織犯罪対策関連三法の立法趣旨とされていた。組織犯罪対策はサミット等でも議論されてきた国際的要請であることも、立法趣旨として指摘されていた。[川英明]

通信傍受の要件

通信傍受の対象犯罪は通信傍受法に別表として掲げられている。それは、殺人、薬物の不正取引(所持・輸入・譲渡し等)、銃器の不正取引(製造・輸入・所持・譲渡し等)および集団密航(不法入国させる行為・輸送・収受等)の4種類の犯罪である。これらは別表犯罪とよばれており、行為類型は40に及ぶ。
 通信傍受の許容要件は少し複雑である。通信傍受法の第3条1項によれば、以下の(1)~(3)のいずれかに該当し、かつ、他の方法によっては犯人特定や犯行状況・内容の解明が著しく困難であるときに、裁判官の発する傍受令状により、通信傍受を実施することが許される。
(1)別表犯罪が犯されたと疑うに足りる十分な理由がある場合。
(2)別表犯罪が犯され、かつ、引き続き当該犯罪と一定の関係にある犯罪(当該別表犯罪と同様の態様で犯されるこれと同一または同種の別表犯罪、または当該別表犯罪の実行を含む一連の犯行計画に基づいて犯される別表犯罪)が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合。
(3)死刑または無期もしくは長期2年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪が別表犯罪と一体的にその実行に必要な準備のために犯され、かつ、引き続き別表犯罪が犯されると疑うに足りる十分な理由がある場合において、それらの犯罪が数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況があるとき。
 傍受対象となる通信はこれらの犯罪関連通信(犯罪の実行、準備または証拠隠滅等の事後措置に関する謀議、指示その他の相互連絡その他当該犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信)である。立法事務当局者等の説明によれば、(2)にあたる場合として想定されているのは、営業的に行われる覚醒(かくせい)剤の密売や銃器の輸入・販売のような事案であり、(3)にあたる場合として想定されているのは無差別大量殺人計画の下に大量の毒物が違法に製造されるような事案である。犯罪捜査は通常はすでに犯されたと疑われる犯罪(過去犯罪)を対象とするものだが、通信傍受は、前記(2)や(3)の場合のように、過去犯罪と一定の関係性(連結性ともよばれる)をもつところの、これから発生すると予測される将来犯罪(未発生犯罪)に関連する通信についても許容されることになっている。これは将来犯罪はその予防・鎮圧が課題であり、その責務は行政警察にあり、過去犯罪は犯人と証拠の捜査が課題であり、その責務は司法警察にあるとした現行法の根本システムと矛盾する。
 通信傍受は裁判官のあらかじめ発する令状(傍受令状)により行われる(同法3条1項)。令状発付の手続は他の強制処分の場合よりも厳重で、令状請求権者は検事総長指定の検事または公安委員会指定の警視以上の司法警察員に限られており、令状発付裁判官も地方裁判所の裁判官に限られている(同法4条1項)。傍受令状には、被疑者の氏名、被疑事実の要旨、罪名、罰条、傍受すべき通信、傍受実施の対象とすべき通信手段、傍受の実施の方法及び場所、傍受ができる期間等が記載される(同法6条)。傍受対象となる通信は電話その他の電気通信であって、伝送路に交換設備があるもの、または伝送経路の全部または一部が有線であるものとされている(同法2条1項)。したがって、携帯電話やファックス、電子メールも対象となる。傍受対象となる通信手段は発信元または発信先の番号や符号(電話番号やメール・アドレス等)により傍受令状において特定される(同法3条1項、6条)。傍受が許されるのは令状において特定された通信手段で授受される犯罪関連通信であるが、犯罪関連通信に該当するかどうかを判断するための傍受が必要最小限の範囲で許される(同法13条1項)。この該当性判断のための傍受はスポット・モニタリング(断続的に短時間の傍受を繰り返す方法)により行われるべきものと説明されているが、犯罪関連通信に該当するかどうかは通信内容全体を聞いてみなければわからないであろうから、たとえば電話による通信の場合などは通話内容がほぼすべて傍受されることとなろう。ここが憲法35条の差押物の特定の要請との関係で問題となる点である。
 通信傍受が許される期間は10日以内で、その期間は傍受令状に記載されるが、裁判官が許可すれば、最大30日間まで延長することができる(同法5ないし7条)。特別の事情があるときは、同一被疑事実に関して同一通信手段について再度の傍受令状の発付が想定されている(同法8条)。[川英明]

通信傍受の実施手続

傍受の実施に関して、通信事業者に協力義務が課され、通信事業者は正当な理由なしには協力を拒めない(通信傍受法11条)。傍受の実施に際しては、傍受実施場所の管理人またはこれにかわる者を立ち会わせなければならない(立会人がいない場合は、地方公共団体の職員を立ち会わせなければならない。同法12条1項)。傍受を実施しているときに、傍受令状記載の被疑事実以外の犯罪で、別表犯罪や死刑または無期もしくは短期1年以上の懲役もしくは禁錮にあたる犯罪について、その犯罪を実行したこと(過去の事柄)、実行していること(現在の事柄)、実行すること(将来の事柄)を内容とする通信が行われたときは、この通信も傍受することができる(同法14条)。これは別件盗聴とよばれることがある。
 傍受した通信はすべて録音その他の方法で記録媒体に記録し、傍受の実施を中断または終了したときは、立会人が封印を行う(同法19・20条)。捜査機関はこの記録媒体(「傍受の原記録」という)を、傍受令状を発付した裁判官が所属する裁判所の裁判官に提出しなければならない(同法20条3項)。被告人または弁護人は、その請求により、正当な理由があるときには「傍受の原記録」のうち必要と認める部分を聴取もしくは閲覧し、またはその複製を作成することを許可される場合がある(同法25条5項)。検察官または司法警察員は傍受の実施終了後、傍受実施の開始、中断、終了の年月日時等を記載した傍受実施状況報告書を作成し、傍受令状を発付した裁判官が所属する裁判所の裁判官に提出しなければならない(同法21条1項)。また、検察官または司法警察員は刑事手続で利用するために、「傍受の原記録」(またはその複製)から「傍受記録」を作成しなければならない(同法22条1、2項)。検察官または司法警察員は「傍受記録」に記録された通信の当事者に、傍受の実施を開始した年月日等を通知しなければならない(同法23条1項)。これにより、「傍受記録」に通信内容を記録された通信当事者は傍受された事実を知ることができる。
 傍受令状発付の裁判や捜査機関がした通信傍受の処分に対して不服がある者は、その取消または変更を求める不服申立ができる(同法26条1、2項)が、「傍受記録」が作成されなかった通信の当事者は傍受された事実を知りえないままとなってしまうから、不服申立も事実上できないことになろう。[川英明]

通信傍受法の運用状況

通信傍受法は、政府に対して毎年、傍受令状の請求・発付の件数、その請求・発付に係る罪名、傍受対象通信の種類、傍受を実施した期間、その期間の通信の回数等を国会に報告することを求めている(同法29条)。この報告内容(すなわち、通信傍受法の運用状況)は警察庁のホームページで知ることができる。
 通信傍受法の制定に対して強い反対があったためであろうが、同法が最初に適用されたのは、新聞報道によれば、通信傍受法の制定から1年半を経た2002年(平成14)1月のことであった。しかしその後は、適用例は漸増を続け、2008年の1年間では、令状請求・発付件数は22件(令状請求却下事例はない)、傍受対象の通信手段はすべて携帯電話で、傍受期間は1件あたり平均10.6日間、傍受を実施した通信の回数は総計4907回(令状1件につき平均223回)、傍受対象となる犯罪関連通信回数は総計622回(傍受を実施した全通信の12.7%)となっている。つまり、傍受すべきでなかった犯罪無関係通信の傍受が増大しているわけであり(2008年には4285件の無関係通信(全通信の87.3%)が傍受された)、このことに注意を要する。[川英明]

通信傍受法の問題点

通信傍受法はその制定過程で世論の強い批判にさらされ、刑法学界でも賛否両論が激しく対立した。
 批判の第一点は、許容される傍受対象通信を傍受令状において犯罪関連通信に限定したとしても、通信内容を知ることなしには犯罪関連通信かどうかを判定することはできないから、通信傍受を許容することは必然的に犯罪関連通信以外の適法な通信をも無限定に傍受させてしまうこととならざるをえないことである。このことは、通信をするかどうか、またいかなる通信をするかは通信当事者の意思次第であり、通信当事者間で通信内容は不断に拡大・発展するために、傍受すべき通信内容を事前に確定することは不可能であるという通信の本質的属性に根ざしており、そのために対象通信であるかどうかの判定も傍受を行う捜査機関の判断に委ねざるをえず、傍受対象が無限定に広がる危険性が大きい。犯罪無関係通信の傍受が増大しているという通信傍受法の運用状況がこのことを実証している。憲法論としていえば、問題は、通信の本質的性格上、傍受対象の特定を求める憲法35条の要請を通信傍受法が充足できないということにある。その意味で、通信傍受法は違憲の疑いの濃い法律である。
 批判の第二点は、未発生犯罪関連通信の傍受を許容する通信傍受法は、行政警察と司法警察との峻別(しゅんべつ)を前提として、犯罪が犯されたという嫌疑(過去犯罪の嫌疑)の存在を捜査権発動の前提条件とする刑事訴訟法の原則に反する疑いがあることである。将来犯罪について捜査(通信傍受)を許容することは司法警察活動と行政警察活動を融合させ、強力な捜査権限の発動を曖昧(あいまい)、不確定な予測的判断に委ねることとなって、権限濫用を招くであろう。司法警察と行政警察の機能・権限の融合が警察権の濫用を招くことは、日本の戦前の警察の実態が示す教訓である。
 批判の第三点は、本質的に無限定化せざるをえない通信傍受は、犯罪と関連しない適法な通信をも監視の網に取り込んでしまう危険が高いことである。このことが、処分の秘密性という通信傍受の本質的性格とあいまって、通信手段が高度に発達した現代社会において、人々の自由なコミュニケーションを阻害し、また萎縮(いしゅく)させ、思想・表現の自由をも制約する危険を生じさせる。アメリカやイギリス、ドイツなどの先進諸国でも通信傍受は一定の限度で許容されてはいるが、通信傍受が行われる社会はけっして健全な社会とはいえないだろう。通信傍受法が法案提出後の国会でいったんは継続審議となったのも、通信傍受という手段が内在する市民的自由に対する深刻な脅威が広く国民に認識されていたからであろう。[川英明]
『法務省刑事局刑事法制課編『基本資料集・組織的犯罪と刑事法』(1997・有斐閣) ▽井上正仁著『捜査手段としての通信・会話の傍受』(1997・有斐閣) ▽現代人文社編集部編『盗聴法がやってくる』(1997・現代人文社) ▽小田中聰樹・村井敏邦・川崎英明・白取祐司著『盗聴立法批判』(1997・日本評論社) ▽現代人文社編集部編『盗聴法がやってきた』(1998・現代人文社) ▽奥平康弘・小田中聰樹監修、右崎正博・川崎英明・田島泰彦編『盗聴法の総合的研究――「通信傍受法」と市民的自由』(2001・日本評論社)』

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