結晶投影法(読み)けっしょうとうえいほう

改訂新版 世界大百科事典 「結晶投影法」の意味・わかりやすい解説

結晶投影法 (けっしょうとうえいほう)

結晶の形を平面上に表現する方法。結晶の晶癖結晶面の形や大きさ)をあらわす必要がなければ,結晶面はこれに垂直な直線によっておきかえられる。そこで図1のように,結晶内の一点Oを中心とし結晶を包む球を考え,Oから結晶の各面(あるいはその延長)に垂線を引き,球表面との交点P1,P2などで結晶面をあらわすことができる。このようにすれば,結晶のすべての面は,球面上の点に還元される。そして結晶における面の交わりである稜(晶帯)は,P1,P2を通る大円に垂直となり,結晶のすべての晶帯は,球面上の大円でおきかえられる。これが結晶の球面上投影である。次に,この投影を一平面上の投影におきかえるわけであるが,それには視点と投影面をどこにおくかによって,いろいろの投影法がある。ここでは,そのうち結晶に最もよく用いられるステレオ投影stereographic projectionと,グノモン投影gnomonic projectionの原理についてのみのべる。

 図1に見られるように,ステレオ投影では視点を南極Sにおき,投影面を赤道面とし,球面上投影点P1,P2とSとを結び,その直線と投影面との交点p1,p2をもって投影点とする。ステレオ投影には二つの特徴がある。それは球面上の円(大円も小円も)がすべて円(図のは円の一部である)として投影されること,球面上の二つの大円のなす角(この角は晶帯間の角に相当する)がそのまま実角として投影されることである。

 グノモン投影は視点を球の中心Oにおき,投影面を北極Nにおいて球に接する平面とし,点Oと点Pを結ぶ線分の延長が平面と交わる点p′を投影点とする(図2)。グノモン投影における特徴は,球面上の大円(したがって結晶の晶帯)がすべて直線となってあらわれることである。図2において,ONOPとの間の角をρ,球の半径を1とすると,Op=tan (ρ/2),Np′=tan ρとなる。以上の関係により,グノモン投影点からステレオ投影点を,また逆にステレオ投影点からグノモン投影点を,容易に求めることができる。この図に見られるように,ステレオ投影において球面上の南半球の点P′とSとを結ぶと,その投影点p″は赤道円の外に出てしまう。そこでこの場合は,球面上投影点P′と北極点Nとを結び,赤道との交点を投影点とする。この際,北半球の点と南半球のそれとを区別するために,普通,北半球の投影点を×印で,南半球のそれを○印で示す習慣がある。北半球の点と南半球の点とが赤道面に関して対称的(すなわち,赤道面が結晶形態における対称面)であれば,両者の投影点は重なり,⊗印で示される。このように,ステレオ投影図は,結晶の形態における対称の要素がどのような位置にあるかを示してくれるので,晶癖などのために結晶形が理想的な幾何学的対称からはずれている場合でも,対称性を知るのに便利である。
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百科事典マイペディア 「結晶投影法」の意味・わかりやすい解説

結晶投影法【けっしょうとうえいほう】

結晶面や対称要素など立体的な特徴を平面上に投影すること。普通ステレオ投影法を用いる。結晶の中心を中心とする球で結晶を包み,中心から結晶面に立てた垂線と球面の交点をその面の球面投影(面の極という)とし,対称軸のような直線はそれ自身と球面との交点をその球面投影として,この球面をステレオ投影すればよい。投影図はウルフネットに描くが,結晶面はその極(点)で示し,対称要素はそれぞれの記号で示す。面角は二つの投影点を通る大円を描き,ネットの目盛から知る。また稜(りょう)や晶帯はそれに垂直な大円の投影で示すのが普通。

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