絶対反応速度論(読み)ゼッタイハンノウソクドロン

化学辞典 第2版 「絶対反応速度論」の解説

絶対反応速度論
ゼッタイハンノウソクドロン
theory of absolute reaction rate

化学反応において反応原系の分子構造,集合状態,およびそのエネルギー状態のみを知ることにより,反応速度絶対値理論的に計算しようとする理論体系をさす.反応系の全原子の位置と運動量の関数として系のエネルギーが表され,その分布関数遷移確率が明らかになれば,反応速度の絶対値が純理論的に求められる.H. Eyring(アイリング)の遷移状態理論は絶対反応速度論の代表的な例で,いくつかの簡単な化学反応,液体拡散,誘電体の緩和現象などの速度過程に成功をおさめた.しかし,一般の反応では,定量的な理論と実験との比較は原理的には可能であっても,多大の困難が伴う場合が多い.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「絶対反応速度論」の意味・わかりやすい解説

絶対反応速度論
ぜったいはんのうそくどろん
theory of absolute reaction rate

統計力学的な方法で反応物の構造から反応速度の絶対値を求めようとする理論。遷移状態理論ともいう。おもに H.アイリングがこの理論を発展させた。反応物から生成物へいたる途中段階にポテンシャルエネルギー極大の状態が必ず存在すると仮定する。このポテンシャルエネルギー極大の状態を遷移状態,このとき存在する反応途中の中間生成物活性錯体という。絶対反応速度論は,反応速度がこの活性錯体の濃度と生成物へ向けて分解する速度とに比例するとして,反応速度を求める理論である。

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世界大百科事典(旧版)内の絶対反応速度論の言及

【反応速度】より

…最も高い活性化エネルギーをもつ素反応段階が律速段階となり,全体の反応速度を定める。この方法を遷移状態理論あるいは絶対反応速度論という。反応速度を理論的に予測する方法として,このほかに,反応経路のエネルギー面上を与えられたエネルギーをもつ反応分子が登っていく様子を,力学の法則を用いて直接算出して求める分子力学の方法がある。…

※「絶対反応速度論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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