アイリング(読み)あいりんぐ(英語表記)Henry Eyring

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイリング」の意味・わかりやすい解説

アイリング
あいりんぐ
Henry Eyring
(1901―1981)

アメリカの物理化学者。化学反応速度理論についての業績で知られる。2月20日メキシコで生まれ、1912年アメリカに渡り、アリゾナ大学を経て、1927年カリフォルニア大学学位を取得、1930年同大学講師となった。1935年アメリカに帰化、その後プリンストン大学教授を経て、1946年以降ユタ大学教授。化学反応は一般に複数の素反応から構成されることが多く、その理論的構築のためには、まず素反応理論の定式化が要求される。アイリングはM・ポランニーの協力を得て、1931年から1935年にかけて、この素反応についての「転移状態理論」を、統計力学量子力学に基礎を置いた理論としてつくりあげた。その体系を詳述した『絶対反応速度論The Theory of Rate Processes共著・1941)は、今日なお、反応理論の基準的書物として広く用いられている。アイリングは液体の「空孔理論」などの業績もあげている。

荒川 泓]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「アイリング」の解説

アイリング
アイリング
Eyring, Henry

メキシコ生まれのアメリカの理論物理化学者.1938年プリンストン大学教授,1946年ユタ大学教授となる.敬けんなモルモン教徒.1931年M. Polanyiと協力し,F. London(ロンドン)による近似式発展させて,簡単な素反応におけるポテンシャルエネルギー曲面を求めた.この理論の発展として,1930年代にかれが“絶対反応速度論”とよび,今日“遷移状態理論”とよばれている化学反応論を展開した.かれはポテンシャルエネルギー曲面のあん部に着目し,系はそこで反応物質と準平衡状態にある活性錯合体を形成し,それによって反応の行方が決まると論じた.この理論は著書The Theory of Rate Processes(1941年)にまとめられ,また共著の著作としてQuantum Chemistry(1944年)もある.晩年は生物物理学研究を行った.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アイリング」の意味・わかりやすい解説

アイリング
Eyring, Henry

[生]1901.2.20. コロニアフアレス
[没]1981.12.26. ソルトレークシティー
メキシコ出身のアメリカの物理化学者。 1912年渡米し,35年帰化した。アリゾナ大学,カリフォルニア大学で学び,ドイツのカイザー・ウィルヘルム研究所に留学 (1929~30) 。帰国後,カリフォルニア大学,プリンストン大学教授を経て 46年から 20年間ユタ大学大学院主任教授の地位にあった。化学反応を量子力学・統計力学的に扱い,35年には活性錯合体の概念を用いて絶対反応速度論発表酵素反応,吸着,光学活性の研究などでも著名であった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「アイリング」の意味・わかりやすい解説

アイリング

米国の物理化学者。メキシコ生れ。1912年渡米,1935年帰化。1938年プリンストン大学教授,1946年ユタ大学教授。1931年ポラニとともに活性化エネルギーの量子論的計算法を発表。素反応の理論的研究を行う。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android