音楽に用いる音の音高、音価、強度、音色などを識別する能力を音感というが、とくに音高に関する能力を絶対音感とよぶ。絶対音感とは、楽器などの助けを借りずに音高を直接知覚する能力で、さらに指定された音を他の音と比較せずに発声する能力を含めることもある。この能力は、先天的な素質によって大きく左右されるが、通常、幼児期(4~7歳)の訓練で、ある程度身につけられる。
絶対音感に対し、与えられた音を基準にして、その音との比較によって音高を判別する能力を相対音感relatives Gehör(ドイツ語)という。これは音高に関してだけでなく、音価やテンポ、強度にまで広げて適用されることもある。絶対音感と異なり、ある程度の年齢になってからでも訓練しだいで身につけられる。
絶対音感は、作曲や演奏に際し好都合な場合が多く、音楽家でこの能力をもつ者は少なくない。モーツァルトが絶対音感に卓越していたという逸話は有名である。しかし、この能力の開発は音高の物理的識別にのみ集中し、音楽の他要素への発展性に乏しい。むしろ相対音感の開発のほうが発展性があり、音楽の総合的能力を高めるためには必要な場合が多い。また、絶対音感が相対音感の助力によって成立している場合も多く、より総合的な音感教育には、両者の統合が望ましい。
[柴田典子]
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…音感教育は単音の性質を識別するだけでなく,さらに音の相互関係に対する鋭敏な感覚(フレーズ感,和声感,調性感,リズム感,楽器法など)を養うまでに発展するが,現在の音感教育はほとんど音高の識別能力の開発のみに集中している。音高に関する音感には,絶対音感と相対音感とがある。絶対音感とは,音高を楽器などの助けを借りずに識別する能力で,先天的な素質の差はあるが幼児期に訓練しないとつきにくい。…
※「絶対音感」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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