音あるいは楽音の性質(音高,音価,音色,強弱など)を聞き分ける能力。この能力をたかめて音楽の学習に役立てることを音感教育という。音楽以外の分野に応用されることもある。音感教育は単音の性質を識別するだけでなく,さらに音の相互関係に対する鋭敏な感覚(フレーズ感,和声感,調性感,リズム感,楽器法など)を養うまでに発展するが,現在の音感教育はほとんど音高の識別能力の開発のみに集中している。音高に関する音感には,絶対音感と相対音感とがある。絶対音感とは,音高を楽器などの助けを借りずに識別する能力で,先天的な素質の差はあるが幼児期に訓練しないとつきにくい。相対音感は,与えられた音からの距離(音程)によって音高を識別する。絶対音感は音高の物理的な識別のみが目的となり,便利な能力だが音楽的な発展性に乏しい。相対音感は音楽の諸要素の学習の基礎となり,発展性を持つ。音感教育は両者が総合されることが望まれる。
執筆者:永冨 正之
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