絶縁物に電圧を加えてもきわめて微弱な電流しか流れないが、その電圧を上昇させていくと、ある電圧値で激しい音と光を伴って突然過大な電流が流れる。この現象を絶縁破壊といい、このときの電圧を絶縁破壊電圧、この絶縁の強さを絶縁耐力とよんでいる。絶縁物としては、気体絶縁材料(空気、フロン、六フッ化硫黄(いおう)など)、液体絶縁材料(変圧器に用いる鉱油、合成絶縁油など)、固体絶縁材料(雲母(うんも)、石綿、磁器、シリコンなど)があり、それぞれ目的に応じて使用されている。これらの絶縁物、とくに液体および固体の絶縁物は、高温で使用する場合の高温劣化、屋外で使用する場合の屋外劣化、電気回路の放電部分で使用する場合の放電劣化などにより、しだいに絶縁性能(絶縁耐力)が低下(経年劣化)する。この絶縁耐力を試験することを耐電圧試験といい、交流電圧(50ヘルツまたは60ヘルツ)を加えて試験する商用周波電圧試験、雷による発生電圧を考慮した雷インパルス電圧試験、遮断器の開閉時に発生する電圧を考慮した開閉インパルス電圧試験などが行われる。高電圧を用いる送変電設備の絶縁設計にあたっては、発生すると予想される過大な電圧に対し、変圧器など重要な機器の永久的な故障を防止することが重要であり、そのためには、過大な電圧を一定値以下に抑制する機器(避雷器)の設置や各箇所の絶縁耐力の適切な選定(絶縁協調)が肝要となる。
[内田直之]
電気絶縁が本来の機能を失うこと。絶縁材料の種類と構成により種々の形をとる。碍子の表面や,電線と接地導体間など空気中の放電をフラッシオーバーというが,電源を切ってアークが消えれば再び絶縁が回復する。このような絶縁を自復性絶縁という。自復性絶縁の絶縁破壊は一時的である。絶縁油など液体中ではまず気泡が生じて気体放電が起こる場合と,液体中で衝突電離が生じ電子的に破壊する場合がある。固体中の破壊も電子的な破壊と熱破壊に分類される。プラスチックで絶縁した場合には,微小な異物や電極上の突起からトリーtreeと呼ばれる樹枝状の放電路が発生し,長時間の間にゆっくりと進展してやがて破壊に至る。水分の多い場所に敷設したケーブルでは電界の作用で水分がプラスチック内に浸入する。これを水トリーと呼び,絶縁破壊の原因になる。
絶縁破壊を防止するには各部の電界強度を減らし,適切な材料を選び,材料中の微細な異物や空隙(くうげき)(ボイド)を減らす必要がある。
執筆者:河野 照哉
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…一般に絶縁体中の電子は外部電場によって容易には状態を変化させることができず,巨視的な電荷の移動を実現できないが,電場がある大きさ以上になるとエネルギー・ギャップを越えて伝導状態に入る電子が数多く生じて電荷の移動を担うので,急激に電気抵抗率が小さくなる。この状態を〈絶縁破壊〉という。熱エネルギーも電子のエネルギー・ギャップ越えを助けるので,一般に絶縁体の電気抵抗率と絶縁破壊強度は温度が高くなるにつれて小さくなる。…
※「絶縁破壊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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