絶縁破壊(読み)ゼツエンハカイ

デジタル大辞泉 「絶縁破壊」の意味・読み・例文・類語

ぜつえん‐はかい〔‐ハクワイ〕【絶縁破壊】

絶縁体に加わる電圧を上昇させた時、ある電圧で急激に電流が流れる現象。また、この電圧を絶縁破壊電圧という。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「絶縁破壊」の意味・わかりやすい解説

絶縁破壊
ぜつえんはかい

絶縁物に電圧を加えてもきわめて微弱な電流しか流れないが、その電圧を上昇させていくと、ある電圧値で激しい音と光を伴って突然過大な電流が流れる。この現象を絶縁破壊といい、このときの電圧を絶縁破壊電圧、この絶縁の強さを絶縁耐力とよんでいる。絶縁物としては、気体絶縁材料(空気、フロン、六フッ化硫黄(いおう)など)、液体絶縁材料(変圧器に用いる鉱油、合成絶縁油など)、固体絶縁材料(雲母(うんも)、石綿磁器シリコンなど)があり、それぞれ目的に応じて使用されている。これらの絶縁物、とくに液体および固体の絶縁物は、高温で使用する場合の高温劣化、屋外で使用する場合の屋外劣化、電気回路の放電部分で使用する場合の放電劣化などにより、しだいに絶縁性能(絶縁耐力)が低下(経年劣化)する。この絶縁耐力を試験することを耐電圧試験といい、交流電圧(50ヘルツまたは60ヘルツ)を加えて試験する商用周波電圧試験、雷による発生電圧を考慮した雷インパルス電圧試験、遮断器の開閉時に発生する電圧を考慮した開閉インパルス電圧試験などが行われる。高電圧を用いる送変電設備の絶縁設計にあたっては、発生すると予想される過大な電圧に対し、変圧器など重要な機器の永久的な故障を防止することが重要であり、そのためには、過大な電圧を一定値以下に抑制する機器(避雷器)の設置や各箇所の絶縁耐力の適切な選定絶縁協調)が肝要となる。

[内田直之]

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改訂新版 世界大百科事典 「絶縁破壊」の意味・わかりやすい解説

絶縁破壊 (ぜつえんはかい)

電気絶縁が本来の機能を失うこと。絶縁材料の種類と構成により種々の形をとる。碍子の表面や,電線と接地導体間など空気中の放電をフラッシオーバーというが,電源を切ってアークが消えれば再び絶縁が回復する。このような絶縁を自復性絶縁という。自復性絶縁の絶縁破壊は一時的である。絶縁油など液体中ではまず気泡が生じて気体放電が起こる場合と,液体中で衝突電離が生じ電子的に破壊する場合がある。固体中の破壊も電子的な破壊と熱破壊に分類される。プラスチックで絶縁した場合には,微小な異物や電極上の突起からトリーtreeと呼ばれる樹枝状の放電路が発生し,長時間の間にゆっくりと進展してやがて破壊に至る。水分の多い場所に敷設したケーブルでは電界の作用で水分がプラスチック内に浸入する。これを水トリーと呼び,絶縁破壊の原因になる。

 絶縁破壊を防止するには各部の電界強度を減らし,適切な材料を選び,材料中の微細な異物や空隙(くうげき)(ボイド)を減らす必要がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「絶縁破壊」の意味・わかりやすい解説

絶縁破壊
ぜつえんはかい
dielectric breakdown

絶縁体 (→誘電体 ) に加わる電圧を増してゆくと,ある限度以上で突然,絶縁性を失って大電流が流れる。この現象を絶縁破壊という。このときの電圧を破壊電圧といい,この電圧を絶縁材料の厚さで除した値,すなわち電位の傾きを絶縁耐力という。空気の絶縁耐力は湿度にもよるが普通は3 kV/mm 程度と考えればよい。天然ゴムが 10~20 kV/mm ,シリコーン油が 100 kV/mm 程度である。絶縁破壊は機器やケーブルの破壊,その他の災害などの原因にもなり,いろいろの対策が考えられている。その機構は絶縁体内にわずかに存在する電子やイオンが大きい電場で加速され電子なだれの現象を起し,電流が増大して破壊にいたるのである。固体の場合にはさらにジュール熱による電気伝導性の増大があり,なだれ現象を一層加速する。気体の場合は気体放電ともいう。

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百科事典マイペディア 「絶縁破壊」の意味・わかりやすい解説

絶縁破壊【ぜつえんはかい】

電気絶縁体に加わる電場の強さがある値を超えると,その物質がほとんど不連続的に絶縁性を失い,大きい電流を通すようになる現象。絶縁破壊を起こすのに要する最小電圧を破壊電圧といい,絶縁破壊を起こさずに絶縁体を使用し得る最高の電圧を絶縁耐力という。絶縁破壊による電気機器の故障はきわめて多い。気体の絶縁破壊は,イオン化された分子が電場に加速されて他の気体分子に衝突・イオン化し,イオン濃度が急に増して気体放電を起こすため生ずる。固体では,絶縁体中を流れる微小電流によるジュール熱が増加し温度が上昇するため起こる熱的絶縁破壊と,イオン結晶内の少数の伝導電子が電場により加速され,結晶原子に衝突して電子をたたき出し,伝導電子がねずみ算式に増加して起こる電子的絶縁破壊がある。

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世界大百科事典(旧版)内の絶縁破壊の言及

【絶縁材料】より

…一般に絶縁体中の電子は外部電場によって容易には状態を変化させることができず,巨視的な電荷の移動を実現できないが,電場がある大きさ以上になるとエネルギー・ギャップを越えて伝導状態に入る電子が数多く生じて電荷の移動を担うので,急激に電気抵抗率が小さくなる。この状態を〈絶縁破壊〉という。熱エネルギーも電子のエネルギー・ギャップ越えを助けるので,一般に絶縁体の電気抵抗率と絶縁破壊強度は温度が高くなるにつれて小さくなる。…

※「絶縁破壊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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