網膜静脈に血栓ができて、血液の流れが悪くなる病気です。血液が血管外にあふれ出して、網膜に出血やむくみを起こします。詰まる部位によって
動脈閉塞症と同様、年齢が高いほど起こりやすいので、加齢が大きな要因と考えられています。やはり糖尿病、高血圧症、動脈硬化症の人では起こる率が高くなります。
分枝静脈閉塞症は、交差部で静脈が動脈に圧迫されて血の流れが悪くなることが、血栓形成の一因と考えられています(図37)。
症状は、中心静脈閉塞症と分枝静脈閉塞症では違いますし、同じ分枝静脈閉塞症といっても詰まる部位によってずいぶん違います。まったく自覚症状がないこともめずらしくありません。出血や
一般に、中心静脈閉塞症では症状が強く出ます。
静脈閉塞症は急性期(静脈が詰まった直後)には、出血やむくみによる症状が主体ですが、何年かのちに突然、硝子体(しょうしたい)出血を起こすことがあります。硝子体出血を起こすと、黒い塊が眼の前に現れて浮遊したり、出血量が多ければほとんど物が見えなくなったりします。
眼底検査によって容易に診断できます。静脈が
治療の方法はおおまかに、経過観察、薬物治療、レーザー網膜光凝固術(もうまくひかりぎょうこじゅつ)(コラム)、硝子体手術があります。静脈閉塞症は、詰まる部位、出血の範囲・程度、経過など、人によって千差万別です。軽症であれば、経過をみているだけで自然に治ってしまうこともあります。
薬物治療では血管を拡張させる薬、血管を強くする薬、出血やむくみの吸収を促進する薬などが内服で使われます。
レーザーによる網膜光凝固の目的は2つあります。ひとつは急性期での出血、浮腫の吸収を促進することで、網膜中心部にむくみがある場合によく行われます。もうひとつは、硝子体出血を予防することで、静脈閉塞の程度が強く、かつ範囲が広い場合に行われます。
硝子体手術は、硝子体出血を起こした場合の治療として以前より行われていましたが、最近は網膜中心部のむくみを取るためにも行われるようになりました。詰まっている部位で血管の
緊急に治療を要する病気ではありませんが、レーザーや手術など積極的な治療のタイミングというものがあります。眼科専門医に診てもらい、経過に応じた治療を受けることが必要です。
河野 眞一郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
網膜の静脈に血栓が生じ、むくみ(網膜浮腫(ふしゅ))や眼底出血を伴って視力の低下をきたす疾患。略称RVO。眼底出血を伴う疾患としては糖尿病性網膜症と並んで代表的なもので、40~50歳代の中年以降に発症し、とくに60歳代以降に多くみられる。
視神経内部の静脈に閉塞が生じる網膜中心静脈閉塞症(CRVO:central retinal vein occlusion)と、その分枝が網膜内で交差する部分の静脈が閉塞する網膜静脈分枝閉塞症(BRVO:branch retinal vein occlusion)がある。動脈硬化を原因とすることが多いため「眼の心筋梗塞(こうそく)」とよばれることもあり、網膜動脈の血管壁の肥厚と硬化のために、接している静脈が圧迫され血流が妨げられて血栓を生じる。静脈内圧が高まると静脈から網膜へと水分や血液が漏出し、網膜浮腫や眼底出血を生じる。網膜に出血が起きるとものが見えなくなり、網膜内の浮腫が光を識別する細胞が集まる黄斑(おうはん)に及ぶ(黄斑浮腫)と、像のゆがみや欠損を生じ視力の低下をきたす。治療は、静脈閉塞の際につくられる水分の排出および新生血管成長作用をもつ血管内皮細胞増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)を抑制する薬の眼内注射により、静脈から網膜への水分や血液の漏出を防ぐ。また網膜のレーザー凝固や、場合により硝子体(しょうしたい)手術なども検討される。
[編集部]
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