日本大百科全書(ニッポニカ) 「総合卸売物価指数」の意味・わかりやすい解説
総合卸売物価指数
そうごうおろしうりぶっかしすう
日本銀行調査統計局により作成されてきた日本の卸売物価指数の総合指数のこと。1982年(昭和57)12月に、基準年次を1980年に更新するに際して、採用品目やウェイト(加重)の変更とともに、卸売物価指数の体系を再構成したが、その時点より新たに採用された名称である。
総合卸売物価指数は、生産および販売に携わる企業どうしの国内および貿易取引段階における物価水準の変動を総合的に把握する目的で作成されてきたものであり、1980年基準指数に変更する際に、国内卸売、輸出、輸入の3物価指数に分離して再構成し、それらの総合指数として作成したものである。国内卸売物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の3指数に関する1980年基準変更時における採用品目数は、それぞれ819、212、154であり、合計1185品目で総合卸売物価指数が作成されていた。ウェイトは国内卸売物価が762.99、輸出物価が113.05、輸入物価が123.96であった。1995年(平成7)基準指数の採用品目数は国内卸売物価が971品目、輸出物価が209品目、輸入物価が247品目で、合計1427品目で、総合指数作成の際のウェイトは、それぞれ792.86、119.35、87.79であった。
指数の構成は、国内卸売物価、輸出物価、輸入物価のそれぞれについて、基本分類類別指数として工業製品、農林水産物、鉱産物、電力・都市ガス・水道、スクラップ類の各指数が作成されたほか、総合卸売物価の需要段階別・用途別指数がつくられてきた。後者は、まず、国内需要財(これは国内品と輸入品とからなる)について需要段階別に素原材料、中間財、最終財の各指数が作成され、それぞれがさらに用途別に分けられ、素原材料については加工用素原材料、建設用材料、燃料、その他素原材料の各指数が、中間財については製品原材料、建設用材料、燃料・動力、その他中間財の各指数が、そして最終財については資本財、消費財の各指数が、それぞれ作成された。輸出品についても同様に製品原材料、建設用材料、資本財、消費財の各指数がつくられた。月間指数と年間指数が作成され、日本銀行から『物価指数月報』『物価指数年報』として公表されてきた。
この総合指数のもとである「卸売物価指数」について、作成当局である日本銀行は、2002年(平成14)11月をもって1995年基準指数の公表を廃止し、2002年12月からはその2000年基準指数の作成、公表を「企業物価指数」の新名称をもって行うことになった。それに伴って、それまでの「総合卸売物価指数」は基本分類指数から参考指数に変更された。そして、2007年11月公表の2005年基準改定指数からは参考指数としての公表も廃止されることになった。その理由は、国内製品および輸出入品を総合した物価指数が、貨幣の購買力尺度としての現代的意味をもつとは考えられなくなっている、ということによるものとされている。
[高島 忠]