斎場御嶽(読み)せーふあうたき

日本歴史地名大系 「斎場御嶽」の解説

斎場御嶽
せーふあうたき

[現在地名]知念村久手堅

久手堅くでけんにある御嶽。国指定史跡および県指定名勝。「中山世鑑」巻一によれば、開闢神の阿摩美久(アマミキョ)が最初に創った御嶽の一つとされ、聞得大君の就任儀礼御新下り(オアラオリ、方音ではウアラウリ)が行われた御嶽でもある。御新下りのとき、久高くだか島のノロが重要な役割を担ったこと、および久高島から砂が当御嶽に運びこまれたことなどにより、かつて御新下りが久高島で行われていたと想定する説もある。「琉球国由来記」では「サイハノ嶽 神名 君ガ嶽主ガ嶽御イベ六御前 一御前 大コウリ 一御前 ヨリミチ 一御前 サノコウリ 三御前 キヨウノハナ」とあり、知念ノロと久手堅ノロの両人の崇所とされる。「三御前 キヨウノハナ」については同治一四年(光緒元年、一八七五)の「聞得大君御殿御城規式次第」に「大こうり、三こうり、寄満、けうのはな、しきよたよる雨か美御水、雨たよるあしか美御水、此六御前」とあるので、由来記のキヨウノハナには「しきよたよる雨か美御水、雨たよるあしか美御水」の二御前が含まれていた。この「しきよたよる雨か美御水、雨たよるあしか美御水」は、キヨウノハナのある岩から垂れ下がる二つの鍾乳石から垂れる水のこと。

御嶽のそれぞれの空間(御前)は、大コウリが正殿二階をさす大庫理、ヨリミチは台所をさす寄満、サノコウリは三庫理(場所、機能など不明)、キヨウノハナは京の内と、首里城内の施設と対応しているものと推測され、そのことによっても、当御嶽が王府の祭祀に直接的にかかわる御嶽であることが示唆されている。かつては国王以外の男子禁制の御嶽であった。大コウリはウジョーグチとよばれる御嶽の入口から入り、石畳を進んで行くと左側にある巨岩の前にある拝所で、御新下り儀礼の主要な舞台となった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

国指定史跡ガイド 「斎場御嶽」の解説

せいふぁあうたき【斎場御嶽】


沖縄県南城市知念にある霊場。知念半島突端の琉球石灰岩が屹立する山中に所在する琉球最高の聖地で、沖縄開闢(かいびゃく)の神「アマミキョ」の創成になるとの伝承があり、国始めの七御嶽の一つといわれている。沖縄随一の霊場として、1972年(昭和47)に国の史跡に指定され、2000年(平成12)に「琉球王国グスク及び関連遺産群」として、世界遺産に登録された。斎場御嶽が国家的な聖地になった時期は不明だが、首里王府時代には祭祀組織の長である聞得大君(きこえおおきみ)と呼ばれる神女の即位儀礼、御新下(おあらお)りの御名付け所の大嶽として崇敬され、大君みずからこの御嶽に参籠する風習があった。御嶽は男子禁制の場所で、国王でも御門口を越えて中へ入る場合は袂を女装に合わせてから入ったといわれる。中には6つの「いべ」と呼ばれる神域があり、なかでも大庫理(うふぐーい)、寄満(ゆいんち)、三庫理(さんぐーい)は、首里城内にも同名の御嶽や広場があり、王権祭祀の聖地にふさわしい名である。現在も、知念、玉城(たまぐすく)の聖地拝所巡礼の東御廻り(あがりうまーい)の聖地の一つとなっている。那覇バスターミナルから東陽バス「斎場御嶽入口」下車徒歩約30分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

百科事典マイペディア 「斎場御嶽」の意味・わかりやすい解説

斎場御嶽【せーふぁうたき】

沖縄県南城市東端,知念岬にほど近い高台にある琉球で最高の聖域とされる祭祀場。古くから沖合の久高島を崇める地として敬われた地で,琉球王国最高の女官である聞得大君(きこえおおきみ)の即位もこの地で行われ,かつては男子禁制であった。石灰岩の巨岩が点在し,久高島をはじめ中城湾を広く望むことができる。近くには,歴史学習体験施設〈緑の館・セーファ〉がある。2000年に〈琉球王国のグスク及び関連遺産群〉の一部として世界遺産に登録されている。
→関連項目沖縄[県]

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事典・日本の観光資源 「斎場御嶽」の解説

斎場御嶽

(沖縄県南城市)
新おきなわ観光名所100選」指定の観光名所。

斎場御嶽

(沖縄県南城市)
日本の重要湿地500」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の斎場御嶽の言及

【沖縄[県]】より

…国王および〈聞得大君〉と深い関係をもつ久高(くたか)島は開闢(かいびやく)伝説でも名高く,知念(ちねん),玉城(たまぐすく)とともにカミグニとされた。知念村久手堅にある斎場御嶽(さいふあうたき)は開闢降臨の地とされ,久高島への遥拝所でもあり,聞得大君の〈御新下(おあらおり)〉という就任儀礼では参籠が行われた。聞得大君はトヨムセダカコともよばれる。…

※「斎場御嶽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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