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職業癌 しょくぎょうがんoccupational cancer

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

職業癌
しょくぎょうがん
occupational cancer

ある職業についている者に多発するをいう。かつてロンドンの煙突掃除人に癌が多発したのは医学史上有名であるが,コールタールを扱う工場の労働者,あるいはアスファルトパラフィンナフトールなどを扱う工場でも,癌の発生率の高いことが認められている。そのほか,鉱山労働者肺癌,放射能取扱者の皮膚癌など,特定の職業と癌の発生の関係が注目されていた。近年,癌が細胞の突然変異によって生じるという仮説をもとにして,発癌因子,特に化学発癌物質に関する分子遺伝学的研究が急速に進歩し,職場環境と発癌との関係についても多くの知見が積上げられてきた。職場環境の諸条件をコントロールし,癌の発生率を抑制することは,今日の課題である。

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世界大百科事典 第2版の解説

しょくぎょうがん【職業癌 occupational cancer】

職業労働に従事して,その作業環境にある発癌要因によって発生する癌を職業癌という。世界で最初に発見され記載された職業癌は,煙突掃除夫のばい(煤)煙による陰囊癌である(イギリスのポットPercival Pott(1775)による)。日本では黒田静,川畑是辰によるガス炉工の肺癌が最初である(1936)。一般の生活での癌は,胃癌をはじめとする消化器癌,子宮癌,乳癌などが多いが,職業癌では皮膚,肺,膀胱など発癌物質が接触,吸入,排出される経路に多い。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

職業癌
しょくぎょうがん

職業性疾病のうち発癌を誘発する作業環境にさらされ腫瘍を発症するもの。頻度の高いものは、ベンジジン、β(ベータ)ナフチルアミンにさらされる業務に従事する人に発生する尿路系腫瘍、石綿(アスベスト)にさらされる業務に従事する人に発生する肺癌や中皮腫、クロム酸塩または重クロム酸塩、コークスまたは発生炉ガスを製造する業務に従事する人に発生する肺癌や上気道の癌などである。
 近年では、印刷会社で働く従業員に多発する胆管癌が問題となり、厚生労働省は業務上の疾病すなわち「職業性胆管癌」として認定した。胆管癌は本来50~60歳代の中高年に好発するが、とくに印刷見本を繰り返し試し刷りする20~40歳代の「校正印刷」担当者に多発することから、印刷機のインキ洗浄に使われる揮発性の高い1,2-ジクロロプロパンを、不十分な換気環境のなかで許容濃度を超えて吸い込んだことが原因と疑われる旨報告された。このように職業癌は、発癌を誘発する化学物質に直接接触したり、吸入したりすることで発症することが多い。こうした事業場での化学物質対策や労災請求について、都道府県労働局の窓口で電話相談を受け付けている。[編集部]

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世界大百科事典内の職業癌の言及

【癌】より

…(1)癌原物質探求の歴史 イギリスの外科医ポットPercival Pott(1714‐88)は1775年に煙突掃除人に陰囊癌が多いこと,それは陰囊が長い間すすにさらされているためではないか,と記載した。これは,環境中に癌原因子が存在することと,職業癌の存在に関する最初の明確な記載であった。これらの観察を基盤にR.フィルヒョーは,大著《細胞病理学》の中で,発癌の刺激説を立てた。…

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