ナフタレンのモノヒドロキシ誘導体をさし,1-(またはα-)ナフトールと2-(またはβ-)ナフトールの2種がある。ともにフェノール臭をもつ昇華性の無色の結晶で,α-体は融点96℃,沸点288℃,β-体は融点122℃,沸点296℃。エチルアルコール,エーテル,クロロホルム,ベンゼンによく溶け,水には溶けない。しかし酸解離指数pKa(20℃)はα-体約9.3,β-体約9.5でフェノールよりやや強い酸であり,アルカリ水溶液によく溶ける。光により暗色に変化し,アンモニア性硝酸銀を還元し,いわゆる銀鏡反応を示すほか,水溶液中の塩化鉄(Ⅲ)によって酸化され,それぞれα-ジナフトール,β-ジナフトールとなる。α-体は酢酸中の三酸化クロムで1,4-ナフトキノンに酸化される。β-体は亜鉛末を加えて蒸留するとナフタレンに還元される。両者とも,染料中間体として重要なナフタレンモノスルホン酸,ナフタレンジスルホン酸の重要な合成原料であるほか,分析用としても各種金属の検出に用いられる。α-,β-体とも対応するナフタレンスルホン酸のナトリウム塩を水酸化ナトリウムと融解して合成される。
執筆者:岡崎 廉治
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ナフタレンの水素原子1個をヒドロキシ基-OHで置換した化合物。その位置により2種の異性体がある。1-ナフトールは無色の柱状結晶。2-ナフトールは無色~微黄色の葉状結晶。いずれの異性体もフェノール状の臭気があり、昇華性。水にはわずかにしか溶けないが、水酸化アルカリ水溶液、エタノール(エチルアルコール)、ベンゼンなどに易溶。塗料、香料、医薬の製造に利用される。相当する1-あるいは2-ナフタレンスルホン酸から製造される。
[徳丸克己]
naphthalenol.C10H8O(144.17).C10H7OH.1-および2-ナフトールの2種類の異性体がある.いずれもそれぞれ相当するナフタレンスルホン酸をアルカリ融解して製造される.1-ナフトールは融点96 ℃,沸点280 ℃ の昇華性柱状晶.2-ナフトールは融点123 ℃,沸点286 ℃ の昇華性葉状晶.いずれもエタノール,エーテル,ベンゼンなどの有機溶媒に易溶,水に難溶.水酸化アルカリ水溶液にはアルカリ塩となってよく溶け,また光によって褐色にかわる.ナフトールを封管中350~400 ℃ に加熱すると2分子脱水縮合して,1-または2-ジナフチルエーテルを生じる.染料,香料,医薬品の合成原料に用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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