ナフトール(その他表記)naphthol

デジタル大辞泉 「ナフトール」の意味・読み・例文・類語

ナフトール(naphthol)

ナフタレン水素原子1個が水酸基置換された化合物。特有の臭気をもつ昇華性の針状または板状結晶。水には溶けにくいが、ベンゼンエタノールなどには溶けやすい。防腐剤染料などの原料化学式C10H7OH

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精選版 日本国語大辞典 「ナフトール」の意味・読み・例文・類語

ナフトール

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( [ドイツ語] Naphthol ) ナフタリンの水素の一つが水酸基と置換された化合物。化学式 C10H7OH α‐ナフトールとβ‐ナフトールの二つの異性体がある。いずれも無色、単斜晶系結晶。ジアゾニウム化合物とアゾ染料をつくるので染料中間体として重用される。β‐ナフトールは劇薬。オキシナフタリン。
    1. [初出の実例]「その後に〈略〉ナフトール染料などが、続々発見せられたにも拘らず」(出典:最新実用衣服と整容法(1928)〈青木良吉〉)
  3. ナフトールぞめ(━染)」の略。
    1. [初出の実例]「花模様のナフトルのはんてんを」(出典:機械のなかの青春(1955)〈佐多稲子〉一)

ナフトール

  1. 〘 名詞 〙 ( [オランダ語] Naphthol ) 植物げっかこう(月下香)」の異名。〔物品識名(1809)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「ナフトール」の意味・わかりやすい解説

ナフトール
naphthol



ナフタレンのモノヒドロキシ誘導体をさし,1-(またはα-)ナフトールと2-(またはβ-)ナフトールの2種がある。ともにフェノール臭をもつ昇華性の無色の結晶で,α-体は融点96℃,沸点288℃,β-体は融点122℃,沸点296℃。エチルアルコールエーテルクロロホルム,ベンゼンによく溶け,水には溶けない。しかし酸解離指数pKa(20℃)はα-体約9.3,β-体約9.5でフェノールよりやや強い酸であり,アルカリ水溶液によく溶ける。光により暗色に変化し,アンモニア性硝酸銀を還元し,いわゆる銀鏡反応を示すほか,水溶液中の塩化鉄(Ⅲ)によって酸化され,それぞれα-ジナフトール,β-ジナフトールとなる。α-体は酢酸中の三酸化クロムで1,4-ナフトキノンに酸化される。β-体は亜鉛末を加えて蒸留するとナフタレンに還元される。両者とも,染料中間体として重要なナフタレンモノスルホン酸,ナフタレンジスルホン酸の重要な合成原料であるほか,分析用としても各種金属の検出に用いられる。α-,β-体とも対応するナフタレンスルホン酸のナトリウム塩を水酸化ナトリウムと融解して合成される。


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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナフトール」の意味・わかりやすい解説

ナフトール
なふとーる
naphthol

ナフタレンの水素原子1個をヒドロキシ基-OHで置換した化合物。その位置により2種の異性体がある。1-ナフトールは無色の柱状結晶。2-ナフトールは無色~微黄色の葉状結晶。いずれの異性体もフェノール状の臭気があり、昇華性。水にはわずかにしか溶けないが、水酸化アルカリ水溶液、エタノール(エチルアルコール)、ベンゼンなどに易溶。塗料香料、医薬の製造に利用される。相当する1-あるいは2-ナフタレンスルホン酸から製造される。

[徳丸克己]


ナフトール(データノート)
なふとーるでーたのーと

1-ナフトール

 分子式  C10H8O
 分子量  144.2
 融点   96℃
 沸点   288℃
 比重   1.09539(測定温度98.7℃)
 屈折率  (n)1.62064

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化学辞典 第2版 「ナフトール」の解説

ナフトール
ナフトール
naphthol

naphthalenol.C10H8O(144.17).C10H7OH.1-および2-ナフトールの2種類の異性体がある.いずれもそれぞれ相当するナフタレンスルホン酸をアルカリ融解して製造される.1-ナフトールは融点96 ℃,沸点280 ℃ の昇華性柱状晶.2-ナフトールは融点123 ℃,沸点286 ℃ の昇華性葉状晶.いずれもエタノール,エーテル,ベンゼンなどの有機溶媒に易溶,水に難溶.水酸化アルカリ水溶液にはアルカリ塩となってよく溶け,また光によって褐色にかわる.ナフトールを封管中350~400 ℃ に加熱すると2分子脱水縮合して,1-または2-ジナフチルエーテルを生じる.染料,香料,医薬品の合成原料に用いられる.

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百科事典マイペディア 「ナフトール」の意味・わかりやすい解説

ナフトール

ナフタレンのH原子を1つ水酸基−OHに置換したもの。分子式C1(/0)H7OH。α‐,β‐の2異性体がある。α‐(または1−)ナフトールは融点96℃,沸点288℃の無色針状晶。β‐(または2−)ナフトールは融点122℃,沸点296℃の白色板状晶。ともに水に難溶,エチルアルコールなどの有機溶媒に易溶。染料中間体,香料(メチルエーテル),医薬品などの原料。それぞれα‐またはβ‐ナフタレンスルホン酸のアルカリ溶融によりつくられる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ナフトール」の意味・わかりやすい解説

ナフトール
naphthol

化学式 C10H7OH 。ナフタリンのフェノール。次の2種がある。 (1) 1-ナフトール α-ナフトールともいう。無色の結晶,融点 96℃,昇華性。染料,香料の合成原料として用いられる。 (2) 2-ナフトール β-ナフトールともいう。無色の結晶,融点 121~123℃。染料,薬品,香料の合成原料として用いられるほか,ゴムの酸化防止剤としても使用される。

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