六訂版 家庭医学大全科 「肛門掻痒症」の解説
肛門掻痒症
こうもんそうようしょう
Pruritus ani (Itchy bottom)
(直腸・肛門の病気)
どんな病気か
肛門周辺部を中心にかゆみ(掻痒)を伴う病気の総称で、原因のつかめない
男女比はおよそ2対1と、男性に多くみられます。
原因は何か
続発性肛門掻痒症の原因には
そのほか、糖尿病や
最近は、肛門を紙で拭きすぎたり、温水トイレで肛門の奥まで洗いすぎることで発生する事例が増えてきました。
症状の現れ方
入浴や就寝後、体が温まるとかゆみが増強することが多く、無意識に局所をかきむしるようです。急性期では肛門周囲のただれ、発赤やはれが強く、べとべとして出血することもあります。慢性期では皮膚が厚く硬くなり、色素沈着で黒ずんできます。
検査と診断
まず肛門を診察し、痔核、
真菌類の検索は治療の選択上重要で、肛門部から分泌物を取って、水野・高田培地などで培養します。女性の場合、腟から肛門にかけて垂れたようにただれている時は腟炎が考えられます。幼児、学童では
治療の方法
原因となる病気と局所病変を同時に治療します。
局所に対して、ステロイド軟膏、抗真菌薬軟膏、抗生剤入り軟膏、抗ヒスタミン軟膏、
特発性肛門掻痒症では、キニーネやペプシンの肛門周囲への局所注射が有効とする報告もあります。
病気に気づいたらどうする
香辛料や、コーヒー、アルコールなどの刺激物を避け、鎮静薬などで安静を保ち、睡眠を十分にとってください。肛門部の清潔保持は重要ですが、排便後の過度な肛門洗浄、石鹸の使用はひかえてください。
1週間でよくならなければ、肛門専門医にかかってください。
松田 保秀
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報