肥料木(読み)ひりょうぼく(英語表記)soil improving tree

精選版 日本国語大辞典 「肥料木」の意味・読み・例文・類語

ひりょう‐ぼく ヒレウ‥【肥料木】

〘名〙 他の樹木肥料となる木のこと。一般に、マメ科などの根粒樹木をさす。

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改訂新版 世界大百科事典 「肥料木」の意味・わかりやすい解説

肥料木 (ひりょうぼく)
soil improving tree

根粒によって遊離窒素を固定し,土壌中に養分を増加させる能力があるため,肥料的効果を期待して植えられる樹木。肥料木にはマメ科植物の各種のほか,グミ属,ハンノキ属の各種,ヤマモモなどがある。根粒はこれらの樹木の根に点在し,根粒菌と共生しているものであって,菌の作用で窒素が固定される。マメ科植物の共生菌バクテリアであり,ハンノキ属やヤマモモの共生菌は放線菌である。肥料木といわれるこれらの樹木が自生している場所は,崩壊地ややせ地である。このため,やせ地やはげ山の植生復旧に植栽される原因にもなっている。スギ人工林の生長を促進させるためにヤマハンノキを混植することは,古くから山梨県の富士川西部の富沢町(現,南部町)や神奈川県南足柄市,静岡県御殿場市などで実行されていた。また,はげ山復旧のためクロマツヒメヤシャブシを混植する技術は,明治初頭に滋賀県の一農民によって開発された。その後ヒメヤシャブシの育苗技術が進み,滋賀県のみならず全国的に行われるようになった。ヒメヤシャブシは伊豆半島山中の崩落斜面などに多く自生しているのでこの地方では1887年ごろには崩壊地に植え付けられていた。関西以西のはげ山の治山に植栽された肥料木には,花コウ岩地域ではヒメヤシャブシ,ヤシャブシ,ヤマハンノキ,エニシダ,メドハギ,ニセアカシアなどがあるが,近年はヤシャブシ,アカシア・メラノキシロンがおもに用いられている。なお,この地域の流紋岩地域,和泉砂岩地域ではヤマモモを用いる。海岸砂防には,アキグミネムノキ,ニセアカシアが用いられる。肥料木といえども,やせ地に植える場合にはリン酸,カリの元肥が必要である。また,肥料木の落葉地表に定着しないと養分が還元しないので,数年で肥料木が衰退して,林地が再び荒廃する。そのため,植栽後引き続いての保育管理が必要である。
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