内科学 第10版 「肺分画症」の解説
肺分画症(発育異常・形成不全)
概念
肺分画症は,その血流を体循環系から受け,肺実質の一部が正常肺から分離された肺の奇形であり,隣接肺との関係から肺葉内分画症と肺葉外分画症に分けられる.肺葉内分画症は分画肺が隣接する正常肺実質とともに同一の臓側胸膜に覆われ(図7-18-1A),肺葉外分画症は,独自の胸膜に覆われる(図7-18-1B).頻度は肺葉内分画症が3/4,肺葉外分画症が1/4を占める.好発部位は肺葉内分画症では左下葉の背側基底部に2/3が,ほかの多くが右側の同部位に生じる.肺葉外分画症は,左下葉と横隔膜の間に生じることが多いが,横隔膜下,横隔膜組織内,縦隔や後腹膜に存在することもある.血流は下行大動脈から受け,肺内分画症では肺静脈へ,肺外分画症では下大静脈や奇静脈に還流する.
画像所見
分画肺は,均一の陰影や多発囊胞・腫瘤影などさまざまな所見を呈しうる.本疾患の確定診断は異常流入動脈を証明することである.以前は大動脈造影が用いられてきたが,近年の機器の進歩によりマルチスライスCTなどによる多断面再構成画像や血管系の三次元再構成画像で分画肺に流入・流出する血管の走行の描出が容易になった.またMRIを用いることで造影剤を用いずに血管系の再構成を行うことも可能である.
臨床所見
肺葉内分画症では,成人になってから感染を機に発見されることが多い.鑑別診断は気管支拡張症や肺膿瘍である.肺葉外分画症は,合併するほかの先天異常を機に新生児期に発見される.分画肺は消化管との交通がなければ感染を起こすことは少ない.[久良木隆繁・礒部 威]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報