肺分画症(読み)はいぶんかくしょう

六訂版 家庭医学大全科 「肺分画症」の解説

肺分画症
はいぶんかくしょう
Pulmonary sequestration
(呼吸器の病気)

どんな病気か

 先天的な異常のため、肺の一部が大動脈から栄養を受けている状態です。正常肺で囲まれた肺葉内(はいようない)分画症と、胸膜におおわれて正常肺と完全に分離している肺葉外(はいようがい)分画症があります。

 肺葉内分画症での血流は、大動脈→分画肺→肺静脈へとなります。気管支と連絡があると二次的に感染を起こします。

 肺葉外分画症での血流は、大動脈→分画肺→下大静脈へまたは奇静脈へとなります。気管支との連絡はないため、ほとんど無症状です。

 繰り返す呼吸器感染が、本症を疑うきっかけになります。

検査と診断・治療

 確定診断は、前述のような肺への異常な血管の存在を大動脈造影を行って証明します。胸部X線像では、下肺野に嚢胞状(のうほうじょう)陰影が認められます。

 肺炎血痰(けったん)を繰り返す場合には、肺の部分切除を考慮します。

千田 金吾

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

内科学 第10版 「肺分画症」の解説

肺分画症(発育異常・形成不全)

(2)肺分画症(bronchopulmonary sequestration)
概念
 肺分画症は,その血流を体循環系から受け,肺実質の一部が正常肺から分離された肺の奇形であり,隣接肺との関係から肺葉内分画症と肺葉外分画症に分けられる.肺葉内分画症は分画肺が隣接する正常肺実質とともに同一の臓側胸膜に覆われ(図7-18-1A),肺葉外分画症は,独自の胸膜に覆われる(図7-18-1B).頻度は肺葉内分画症が3/4,肺葉外分画症が1/4を占める.好発部位は肺葉内分画症では左下葉の背側基底部に2/3が,ほかの多くが右側の同部位に生じる.肺葉外分画症は,左下葉と横隔膜の間に生じることが多いが,横隔膜下,横隔膜組織内,縦隔や後腹膜に存在することもある.血流は下行大動脈から受け,肺内分画症では肺静脈へ,肺外分画症では下大静脈や奇静脈に還流する.
画像所見
 分画肺は,均一の陰影や多発囊胞・腫瘤影などさまざまな所見を呈しうる.本疾患の確定診断は異常流入動脈を証明することである.以前は大動脈造影が用いられてきたが,近年の機器の進歩によりマルチスライスCTなどによる多断面再構成画像や血管系の三次元再構成画像で分画肺に流入・流出する血管の走行の描出が容易になった.またMRIを用いることで造影剤を用いずに血管系の再構成を行うことも可能である.
臨床所見
 肺葉内分画症では,成人になってから感染を機に発見されることが多い.鑑別診断は気管支拡張症や肺膿瘍である.肺葉外分画症は,合併するほかの先天異常を機に新生児期に発見される.分画肺は消化管との交通がなければ感染を起こすことは少ない.[久良木隆繁・礒部 威]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「肺分画症」の意味・わかりやすい解説

肺分画症
はいぶんかくしょう
pulmonary sequestration

肺分離症ともいう。大動脈から肺葉に異常動脈が入るため,その動脈の分布領域が正常の肺組織から分離して存在するようになるもので,この部分には気道と交通して嚢胞が発生しやすい。左下肺葉に多い。原因は胎生期の発生異常にある。しばしば感染が起り,発熱や喀痰がみられる。診断は血管撮影による。治療は,異常動脈を含めて肺葉切除を行う。

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