翻訳|gastrocamera
ガストロカメラともいう。胃癌,胃潰瘍,胃ポリープなどの胃内病変の診断に際して用いられる医療機器で,胃内腔に挿入し,体外から遠隔操作でフィルムを巻き上げ,カメラのアングルを操作して撮影する。1950年に日本で発明され,それまで自覚症状がなく発見が手おくれのために根治手術が不可能の場合が多かった胃癌の早期発見に威力を発揮し,急速に普及した。胃カメラの連結部直径は7.5mmと細く,集団検診にも用いられる。固定焦点,固定絞りの広角レンズ(口径比1:11,撮影深度20~100mm,画角108度)で,シャッターはタングステン豆ランプの瞬間せん光による夜間撮影の原理を用いている。胃内腔に自動送気システムで空気を送り,腹壁を透過してくる光の位置でカメラの胃内での位置方向を容易に知り,数分で盲点なく手軽に撮影できる。利点は,挿入が容易で,操作も迅速かつ確実なことである。
現在は,直接観察しながら写真を撮影することを兼ね合わせ,同時に直視下に病変部を一部採取して病理組織診断に供するために,生検用ファイバースコープ付胃カメラが開発された。従来の胃カメラに対して,光ファイバーを応用したもので,先端ランプ照明を廃して体外から照明用の光を送るライトガイド(コールドライト光源)方式が用いられ,このため電球の大きさだけ先端硬性部の長さが短くなる利点がある。この方式だと,先端が熱をもつことがきわめて少なく,きわめて明るい照明が得られ,やけどの心配もない。フィルム装換は先端部でフィルムカセット方式としたため,暗室内でのフィルム交換や暗箱の必要がなくなった。したがって,従来の上下アングルのほかに左右アングルを付けることが可能となった。この4方向アングルは,より確実かつ精密な内視鏡による観察と写真撮影を可能にした。手元の操作部はトランペット式の自動送気・送水・吸引装置を付けることで,胃内腔の伸展は自由となり,胃液採取も簡単に操作できる。生検鉗子用のチャンネルはファイバースコープ内に設けられ,必要に応じていつでも直視生検が可能であるし,病巣にテフロン管を密着し陰圧で管内に細胞を吸引または専用ブラシを用いて直視下擦過細胞診もできる。撮影写真は,シャッターを押すだけで,つねに適正露出の写真が得られるようになっている。生検用ファイバースコープ付胃カメラは診断するものに使用されるばかりでなく,これを用いて胃ポリープを高周波電流を利用して切除したり,レーザー光線を用いて胃内壁からの出血源を止血する処置治療も可能である。レンズとランプの撮影機構と送気・送水口や鉗子口以外は胃内腔に入る必要がないので,苦痛は軽減されて,従来の胃カメラの欠点はほとんど克服された。
→内視鏡
執筆者:大塚 幸雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…しかし,この程度の曲りでは盲点も多く,使用には高度の技術を必要とした。そこで東京大学の宇治達郎(1919‐80)はオリンパス光学工業の杉浦睦夫,深海正治らの協力を得て,50年に胃のなかに挿入して撮影できる小さい写真機を発明して胃カメラgastrocameraと名づけた。胃カメラでは胃の内部を直接に見ることはできなかったが,約30枚のカラー写真におさめることができた。…
…しかし,この程度の曲りでは盲点も多く,使用には高度の技術を必要とした。そこで東京大学の宇治達郎(1919‐80)はオリンパス光学工業の杉浦睦夫,深海正治らの協力を得て,50年に胃のなかに挿入して撮影できる小さい写真機を発明して胃カメラgastrocameraと名づけた。胃カメラでは胃の内部を直接に見ることはできなかったが,約30枚のカラー写真におさめることができた。…
※「胃カメラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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