胆嚢摘出後症候群
たんのうてきしゅつごしょうこうぐん
postcholecystectomy syndrome
胆嚢摘出術を主体とした胆石症手術後に、おもに胆道に関係があると考えられる疼痛(とうつう)、発熱、黄疸(おうだん)、不快感などの症状が軽快せず持続または増強、あるいは新しく発生することがある。これらの病変を一括して胆嚢摘出後症候群とよんでいる。この症候群は特定単独の病態ではなく、原因は多種多様で病態も種々である。
発生頻度は正常の生活に支障をきたすほどの症状を訴えるのは2~5%程度である。原因は手術前からあった病変によるものと、手術によって発生した病変によるものに大別される。前者は共存する病態の見落としに基づくもので、随伴する慢性膵障害、過敏性腸症候群、神経症などの存在の認識は重要である。後者は不完全な手術や手技によって新しくつくられた病態に基づくもので、遺残胆石や乳頭狭窄(きょうさく)の見落とし、胆管狭窄、再発胆石などが主要な病態である。
症状は、上腹部不快感、右季肋(きろく)部(右側の最下方にある肋骨(ろっこつ)部)痛、黄疸、発熱、腹部膨満感、食欲不振、便通異常などである。治療は、原因により異なり、適切な検査を行い機能的異常が主体であると診断した場合は規則正しい生活を心がけ、暴飲暴食は避け、食生活を正しく、便通をよくすることが重要であり、内科的療法を行う。内科的治療に抗する場合、とくに器質的変化が原因と確診した場合には原因を除去する外科的治療に踏み切るべきである。遺残胆石には内視鏡的経乳頭的摘出も行われる。
[中山和道]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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「胆嚢摘出後症候群」の解説
たんのうてきしゅつごしょうこうぐん【胆嚢摘出後症候群 Postcholecystectomy Syndrome】
[どんな病気か]
胆石症(たんせきしょう)や胆嚢(たんのう)ポリープなどの病気で胆嚢を切除したあと、腹痛、黄疸(おうだん)、発熱など胆道疾患(たんどうしっかん)と関係がある症状や、吐(は)き気(け)、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)、便通異常などの不定愁訴(ふていしゅうそ)がおこる状態をいいます。
[原因]
多くの場合は、取り残した胆管結石(たんかんけっせき)があったり、あるいは手術後に胆管が細くなったり、乳頭炎(にゅうとうえん)や慢性膵炎(まんせいすいえん)などを併発したことが原因ですが、明らかな病変が指摘できない例もあります。このような場合は、胆汁(たんじゅう)がうまく流れず、胆道の内圧が上昇するために腹痛などが出現するのではないかと考えられています。
[検査と診断]
まず胆石が胆管内に残っていないかなど、症状をおこす原因を調べる必要があります。検査しても、原因となる器質的な疾患(臓器の病変)が見つからない場合は、総胆管(そうたんかん)の十二指腸(じゅうにしちょう)への出口にあたるファーター乳頭(にゅうとう)の機能検査などが役立つことがありますが、その診断は簡単ではありません。
[治療]
原因となる病気が明らかになった場合は、その原因を取り除く治療が必要です。たとえば、胆管に胆石が取り残されている場合は、十二指腸の乳頭部から総胆管内にカテーテルを入れて内視鏡的に取ることができます。
胆管狭窄(たんかんきょうさく)がある場合などは、再手術が必要になることもあります。
明らかな原因が見つからない場合は、対症的療法として、胆道(たんどう)ジスキネジー(「胆道ジスキネジー(胆道運動異常症)」)に準じた治療が行なわれます。また、難治性(なんちせい)の例に心身医学(しんしんいがく)的アプローチが有効なことがあります。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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