胆嚢の炎症で、胆石の物理的刺激、胆汁うっ滞により起こる細菌感染、膵液の逆流などが病因と考えられる。感染の経路には、上行性、血行性およびリンパ行性があり、大腸菌がもっとも多く、ブドウ球菌、レンサ球菌(連鎖球菌)がみられる。大部分は胆石を合併しているが、胆石を伴わない無石胆嚢炎もまれにある。急性と慢性に分けられる。
急性胆嚢炎は、ほとんどが胆石を有する患者に突然発症し、発熱、悪寒(おかん)、戦慄とともに右季肋(きろく)部(右側の最下方にある肋骨(ろっこつ)部)痛を訴え、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)などもしばしば伴う。黄疸(おうだん)はあっても軽度で、白血球増加、腹部超音波検査で緊満腫大した胆嚢と肥厚した胆嚢壁を認め、胆嚢内部には膿性分泌物を描出したデブリーdebrisがみられる。治療は抗生物質を投与する。超音波検査で改善所見が認められないときには経皮経肝胆嚢ドレナージで排膿する。胆嚢蓄膿や穿孔(せんこう)の危険が予想される場合は、すみやかに胆嚢摘出手術を行う。慢性胆嚢炎は、胆石を有する患者に発症し、急性胆嚢炎に引き続いて起こるもの、最初から慢性に経過する場合がある。症状は右季肋部の不快感や微熱を訴え、しばしば胆石を伴う疼痛(とうつう)を訴える。治療は胆嚢摘出術を行う。
[中山和道]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
(2014-5-26)
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…この胆囊粘膜が炎症などに付随して胆囊壁内の筋層あるいは漿膜下組織に偽憩室状に入り込んで洞状になったものをロキタンスキー=アショッフ洞と呼ぶ。胆囊壁内胆石あるいは胆囊炎の原因となりうる。
[機能]
機能的には胆囊は,毎日肝臓でつくられ,肝胆汁として排出される胆汁のおおよそ1/2くらいの量を蓄え,放出を調節している。…
…急性の腹痛を起こす病気には次のようなものがある。
[胆石症]
胆囊内に結石が生じるもので,胆囊壁には炎症(胆囊炎)を伴っていることが多い。腹痛はいろいろの程度があるが,上腹部やや右寄りの部位(右季肋部)に圧痛があり持続的で,七転八倒の痛みと表現されている。…
※「胆嚢炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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