体力の測定において全身の筋力の指標となるもので,1910年代から,手,体幹,足などの抗重力筋群(身体の後ろ側の筋群)を中心とした全身の引き上げる筋力として計測されてきた。計測はひざを伸ばし,腰から上体を30度前かがみにした手に,力量計を介した棒を握り,上体を腰から伸ばすように最大努力で引き上げる。この背筋力計測時の筋肉の使い方を筋電図で調べると,上肢,肩,腰,臀部,下肢など各部がよく使われ,全身の力といわれるゆえんでもある。成人男子の背筋力は100~130kg,女子では50~80kgで,年齢的推移は20歳代でピークになり,その後,年齢による低下は大きい。職業別では重量物を取り扱う作業者で140~180kgくらいである。最近の労働者の背筋力は30年くらい前の資料と比較すると約20kgくらい低位になっている。これらの現象は生活場面における背筋の使用と関連しているとみられ,姿勢保持や疲労性に影響するといわれる。
執筆者:大西 徳明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
背筋力計を使って測定した力を一般に背筋力とよんでいる。背筋力計によって測定される値は、体幹背部にある広背筋を中心とした筋群、および腰部や殿部の筋力が総合されたものである。測定される値を適正なものとするためには、膝(ひざ)を曲げない、背筋(せすじ)を伸ばす、腰の前傾角度を30度にして鉛直上方に徐々に力を入れ、最大の力まで引くなどの方法を守ることがたいせつである。背筋力は、握力とともに、体の筋力を示す代表値の一つとして考えられており、成長に伴って大きな値を示すようになる。また、背筋力は、人間が二足直立姿勢を保つうえではたいせつなものであるが、さらに運動時などでは腹筋とうまくバランスのとれていることも必要となる。一般成人男子の背筋力は150キログラム前後であるが、優れた運動選手(レスリングやウエイトリフティングなど)では200~300キログラムとなる。
[小野三嗣]
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