手で物を握る力のこと。体力測定の際、筋力の指標として背筋力などとともに用いられる。一般的には、どれだけ強く握れるかという能動的握力を、握力計を使って、2~3回測定している。測定時には、腕から伸びている屈筋群が収縮している。連続して測定すると、人によって数回のうちに握力が低下する者と、低下しにくい者とがあり、最大筋力の大きい者が、かならずしも高い値を連続して維持できるとは限らない。また、左右の手で握力差が大きい者と小さい者とがある。これらは日常生活において、どのように握力を発揮しているかに影響される。継続的に握り締める能動的握力に対して、受動的握力がある。これは、握った手の指を伸ばそうとする、あるいは手のひらを開かせようとする力をかけて、どこまで耐えられるかを測定する。鉄棒などにつかまってぶら下がったりするときに発揮される力が受動的握力で、能動的握力よりも大きいが、両者間の相関はそれほど高くない。
[小野三嗣]
握力測定の器具で、一般的に使われているのは、能動的握力を測定するのに用いられるスメドレー式握力計である。測定時には、グリップの幅を調節して人差し指の第二関節が直角になるようにし、立位姿勢をとり、振り回したり跳びはねたりしないようにして握り締める。これによって移動した針の目盛りが握力である。測定に際しては、手からばねに加えられる機械的な力をキログラム単位に置き換えて表す器具の性質上、正確な値を得るためには、握力計の示す値が正確であるよう調節しておくことがたいせつである。
[小野三嗣]
指を曲げて握りしめたときの筋力の最大値。手指屈筋群の筋力にあたる。通常生活でもよく使われる筋力なので,いろいろの筋力計測項目のなかでも代表的なものとされる。握力計測には,ふつう,親指のつけ根の部分と他の4指の第2関節部とで前腕と直角においた握り棒を握りしめ,最大努力で数秒間握って測る。個人ごとに握り幅を調節できるスメドリー式握力計が使われることが多い。日本人の平均は,成人男子で40~50kgぐらい,女子20歳代で30kg前後で,利き手が5kgほど優れている。年齢差がみられ,20歳代で最高で,30歳代から年齢が上になるほど下がる。しかし,生活のなかで比較的頻度多く使われる筋力なので,極端には下がらない。仕事で重量物を取り扱う人では60~70kgかそれ以上に達するし,テニス愛好者などでも高くなる。最近の握力は,以前とくらべて男女とも低位であって,とくに若い女性の握力が低めとなり,年齢上のピークが若いほうに移ってきているのが特徴である。
執筆者:小木 和孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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