日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオンポンプ」の意味・わかりやすい解説
イオンポンプ
いおんぽんぷ
ion pump
生体膜を横切ってイオンを能動的に輸送する機構をいう。濃度と電位の勾配(こうばい)に逆らってナトリウムイオン(Na+)を細胞内より排出するナトリウムポンプは、同時に細胞外からカリウムイオン(K+)をNa+対K+が3対2の割合で取り入れるNa+‐K+交換ポンプである。そのエネルギーはアデノシン三リン酸(ATP)の分解によって得られる。このポンプは、Na+とK+により活性化されるATPアーゼで、異なる二つの部分、α(アルファ)‐およびβ(ベータ)‐サブユニットよりなる膜タンパク質分子である。生物界にはほかに、H+ポンプ、Ca2+ポンプ、Cl-ポンプなどが知られている。H+ポンプ(プロトンポンプ)は、ATP分解によるエネルギーを利用した 濃度勾配に逆らったH+の輸送のほかに、ミトコンドリアや葉緑体で、H+の濃度勾配を利用してATPを合成し、エネルギーの生産に働いている。
[村上 彰]