イオンポンプ(読み)いおんぽんぷ(英語表記)ion pump

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオンポンプ」の意味・わかりやすい解説

イオンポンプ
いおんぽんぷ
ion pump

生体膜を横切ってイオンを能動的に輸送する機構をいう。濃度電位勾配(こうばい)に逆らってナトリウムイオン(Na+)を細胞内より排出するナトリウムポンプは、同時に細胞外からカリウムイオン(K+)をNa+対K+が3対2の割合で取り入れるNa+‐K+交換ポンプである。そのエネルギーはアデノシン三リン酸(ATP)の分解によって得られる。このポンプは、Na+とK+により活性化されるATPアーゼで、異なる二つの部分、α(アルファ)‐およびβ(ベータ)‐サブユニットよりなる膜タンパク質分子である。生物界にはほかに、H+ポンプ、Ca2+ポンプ、Cl-ポンプなどが知られている。H+ポンプ(プロトンポンプ)は、ATP分解によるエネルギーを利用した 濃度勾配に逆らったH+の輸送のほかに、ミトコンドリアや葉緑体で、H+の濃度勾配を利用してATPを合成し、エネルギーの生産に働いている。

村上 彰]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イオンポンプ」の意味・わかりやすい解説

イオンポンプ
ion pump

真空ポンプの1種で,気体分子をイオン化して電極に集めて排気する機械陰極陽極の間に高電圧を加えて放出された電子を強い磁場の中で螺旋運動させると,電子は気体分子と衝突して分子をイオン化し,イオンは電極に集められる。イオンや中性の気体分子が吸着されやすいように,電極にゲッターを用いたものをゲッターポンプといい,10-9Pa 程度の高真空が得られる。

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