脊髄性筋萎縮症(読み)セキズイセイキンイシュクショウ

デジタル大辞泉 「脊髄性筋萎縮症」の意味・読み・例文・類語

せきずいせい‐きんいしゅくしょう〔‐キンヰシユクシヤウ〕【脊髄性筋萎縮症】

脊髄の運動神経細胞の病変によって骨格筋が萎縮し、筋力が低下する遺伝性の疾患指定難病の一つ。乳児期に発症する重症型(Ⅰ型)、乳児期から幼児期に発症する中間型(Ⅱ型)、幼児期から小児期に発症する軽症型(Ⅲ型)、および成人期に発症するⅣ型がある。Ⅰ~Ⅲ型の大多数は常染色体潜性遺伝で、両親とも保因者の場合に25パーセントの確率で発症する。SMA(spinal muscular atrophy)。脊髄性進行性筋萎縮症SPMAspinal progressive muscular atrophy)。

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共同通信ニュース用語解説 「脊髄性筋萎縮症」の解説

脊髄性筋萎縮症

脊髄にある運動神経細胞の変性により、手脚などの筋力低下や筋萎縮が生じる進行性の病気。厚生労働省の指定難病で、発生率は出生2万人に対して1人前後。発症する年齢などに基づき、四つのタイプに分類される。最も重いのは生後6カ月までに発症する型で、支えなしに座ることができなかったり、誤嚥ごえんしやすくなったりする。

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内科学 第10版 「脊髄性筋萎縮症」の解説

脊髄性筋萎縮症(運動ニューロン疾患)

(3)脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)
定義・概念
 脊髄性筋萎縮症は小児期発症の「狭義のSMA」と成人発症で下位運動ニューロン症候のみを呈する運動ニューロン疾患を含む「広義のSMA」がある.狭義のSMAは常染色体劣性遺伝性の神経変性疾患であり,下位運動ニューロンの変性,骨格筋萎縮と全身の筋力低下が特徴である.大部分でSMN1(survival motor neuron 1)遺伝子欠失が認められる.生後6カ月までに発症し重症型であるI型(Werdnig-Hoffmann病),1歳6カ月以降に発症し,起立または歩行が可能となるⅢ型(Kugelberg-Welander病),その中間型であるⅡ型に分類される.広義のSMAには成人発症で下位運動ニューロン症候のみを呈する運動ニューロン疾患であるⅣ型を含む.従来は変性が下位運動ニューロンに限局した運動ニューロン疾患を進行性脊髄性筋萎縮症(spinal progressive muscular atrophy:SPMA)と総称する場合があったが,世界的にSPMAという用語がほぼ用いられていない現状を踏まえ,2009年に厚生労働省の特定疾患認定対象に追加される際に病名としてSMAが用いられた.Ⅳ型について,経過中に上位運動ニューロン症候が出現したり,剖検病理診断でALSとされるケースも多く,ALSとの異同が問題となる.
原因・病因
 ヒトのSMN遺伝子は複数のコピーが存在する.SMN 1遺伝子のmRNAはほぼ100%適切なスプライシングを受けるが,SMN 2遺伝子のmRNAは10%ほどしか適切なスプライシングを受けない.SMN 1遺伝子が欠失した場合,SMN 2遺伝子由来のSMN蛋白しか発現しないことが病因であり,SMN 2遺伝子がどの程度の量のSMN蛋白を発現できるかによってI型~Ⅲ型の重症度の差が生まれると考えられている.Ⅳ型について原因は不明である.
疫学
 欧米でなされた発生頻度の調査により,I型~Ⅲ型はそれぞれ出生10万人あたり4~5人である.
臨床症状
 I型は筋力低下が重症であり,フロッピーインファント(floppy infant,筋緊張低下児)を呈する.肋間筋に比して横隔膜の筋力が維持されるため,奇異呼吸を呈する.支えなしに座れるようにならず,哺乳困難,誤嚥,呼吸不全をきたす.Ⅱ型は支えなしに立てるようにならない.舌萎縮,手指振戦,腱反射の減弱または消失を示す.座位保持が可能となることが多いが,しだいに側弯や関節拘縮が目立つようになる.Ⅲ型はいったん歩行可能となるが,運動発達の遅れ,転倒しやすいなどの症状で気づかれる.筋萎縮・筋力低下は体幹,四肢近位筋に強く,上肢より下肢に強い.顔面筋の罹患はあっても軽度である.手指振戦,腱反射減弱を認める.知能障害,知覚障害,膀胱直腸障害は認めない.Ⅳ型の症状はALSに類似するが,痙性はなく,全身の腱反射は減弱または消失する.
検査成績
 筋電図で高振幅電位や多相性電位などの神経原性所見を認める.I型~Ⅲ型についてはSMN 1遺伝子の欠失が証明されれば診断は確定する.
合併症
 I~Ⅲ型について,拘縮が足関節から始まりやすく,関節可動域が制限されてくる.側弯,胸郭変形や腰椎前弯の進行も避けがたいことが多い.
経過・予後
 Ⅰ型の死亡年齢は平均6~9カ月,95%は18カ月までに呼吸不全や呼吸器感染症で死亡する.Ⅱ型は2歳以上の生存が可能であるが,呼吸不全が次第に目立ってくる.Ⅲ型の経過は慢性で20歳以前の死亡はまれである.経過には個人差があり,10歳代前半で歩行不能になる例や,30歳代でも歩行し日常生活を自立している例などがある.Ⅳ型の経過はALSに類似するが,全体の平均ではややALSより進行が遅い.
治療・予防・リハビリテーション
 根治的治療法は未開発である.関節可動域訓練を中心としたリハビリテーションは拘縮予防,日常生活活動度の維持に有用である.呼吸障害に対して,非侵襲的陽圧換気(NPPV)や人工呼吸器を用いる例もある.[祖父江 元]
■文献
平山恵造:若年性一側上肢筋萎縮症—その発見から治療まで. 臨床神経,33: 1235-1243, 1993.

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