腕の力を競う競技。〈うでおし〉〈うでたおし〉〈てがえし〉〈てずもう〉などの別称でも呼ばれていた。《書言字考節用集》に〈相扠(たがえし)/(うでおし)〉,《名物六帖》に〈闘腕(うでおし)〉などとある。これについて《嬉遊笑覧》に〈それは手を捩(ねじ)る事とも聞ゆれど,手がへしという名はよく腕押しにかなへり,闘腕といへるも是なるべし〉とある。《義経記》に〈腕押〉とあり,《曾我物語》に〈力くらべの腕相撲一番といふままに〉と,腕相撲と明記されている。《好色一代男》《諸艶大鑑》にはともに〈手相撲〉とある。このように名称は多少異なるが,腕相撲のことで,それは《曾我物語》にいうように往昔の力比べの一種である。方法については,《酒席遊戯》(1896)に〈腕角力仕方は,双方とも右の臂(ひじ)を畳に附けて,その手を握り合い,互に左へ押し倒すなり。勿論押し倒されて手の甲畳に附けば負なり,又臂を上げるも負けと為す〉とあり,今昔変りなく同じ方法で行われてきたことが知られる。J.ジョイスの《ダブリン市民》にも腕相撲の場面が描かれている。なお,技を知らず腕の力だけでとる相撲を〈腕相撲〉ともいう。
執筆者:半澤 敏郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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