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腹部大動脈瘤 ふくぶだいどうみゃくりゅうAneurysm of the Abdominal Aorta

家庭医学館の解説

ふくぶだいどうみゃくりゅう【腹部大動脈瘤 Aneurysm of the Abdominal Aorta】

◎腹痛、腰痛は破裂の前兆
[どんな病気か]
 横隔膜(おうかくまく)より下の腹部大動脈(ふくぶだいどうみゃく)に発生した動脈瘤(どうみゃくりゅう)で、大動脈瘤のなかで、もっとも頻度の高いものです。とくに、両側の腎動脈(じんどうみゃく)が枝分かれした後にできる瘤(こぶ)がもっとも多く、両側下肢(かし)へ分岐(ぶんき)する血管(総腸骨動脈(そうちょうこつどうみゃく))が瘤化(りゅうか)したり、逆に、閉塞(へいそく)や狭窄(きょうさく)を合併することがよくあります。
 原因の大半は動脈硬化(どうみゃくこうか)ですが、まれに炎症性動脈瘤(えんしょうせいどうみゃくりゅう)によることもあります。
[症状]
 臍部(さいぶ)を中心に触れて、拍動(はくどう)する腫瘤(しゅりゅう)に気づくことが多いのですが、特別な症状がないのがふつうです。ところが、瘤が拡大すると、腰部の神経や骨が圧迫されて腹痛や腰痛がおこったり、腸や腎(じん)への血流障害によると思われる不定の消化器症状や腎機能低下がみられることがあります。
 腹痛や腰痛が持続し、増強するときは切迫破裂(せっぱくはれつ)(破裂の直前)と考えるべきです。破裂すると、激しい腹痛とともに、腹腔内出血(ふくくうないしゅっけつ)や後腹膜血腫(こうふくまくけっしゅ)が生じ、血圧が急激に低下してショック状態となり、放置すると死に至ります。
[検査と診断]
 動脈硬化や糖尿病のチェックが必要です。正確な診断のためには、超音波検査やCTスキャン、大動脈造影を行ないます。とくに手術実施のためには、大動脈造影によって瘤の位置や腹部動脈分枝(ぶんし)との関係が正確に診断されなければなりません。
 腹部に拍動性腫瘤(はくどうせいしゅりゅう)を触れる場合、がんとの区別もたいせつです。やせた人では、大動脈の屈曲(くっきょく)や蛇行(だこう)を瘤と誤ることもあります。
◎外科治療は人工血管置換が中心
[治療]
 5cm未満の小さい動脈瘤では、経過観察をすることもあります。しかし、大動脈瘤は破裂するものと考え、とくに5cm以上の大きさの動脈瘤では、年齢を問わず、外科治療を実施すべきです。
 外科治療の基本は、瘤を切除し、人工血管に置換することです。
 腹部大動脈瘤の大部分を占める腎動脈分岐部よりも末梢(まっしょう)側(心臓に遠いほう)の動脈瘤の場合は、大動脈を単純に遮断し、補助手段を使わずにY型人工血管に置換する手術を行ない、その成績もきわめて良好です。
 腹部大動脈瘤がある人は、破裂してからの緊急手術の成績がきわめてよくないことを考えると、破裂前に予定手術を受けることをお勧めします。
●手術後の養生
 早期離床をはかり、早い体力回復と社会復帰をめざします。また、合併していることの多い高血圧や糖尿病の治療を行ないます。1~2か月で術前の状態にもどれます。
[日常生活の注意]
 禁煙を守り、高血圧や動脈硬化の予防につとめます。減塩食や低脂肪食の摂取を心がけることもたいせつです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

腹部大動脈瘤
ふくぶだいどうみゃくりゅう

大動脈壁の一部あるいは全体が弱くなって拡張をきたす大動脈瘤のうち、腹部大動脈に発生するもの。動脈硬化が原因となることが多く、ほかに外傷や細菌感染、大動脈の炎症、梅毒などによってもおこる。高齢者においてはこのほか高血圧や喫煙習慣なども危険因子にあげられる。動脈瘤の形状は嚢(のう)状のものもあるが紡錘状を呈することが多く、急激に拡張して破裂すると激しい痛みと多量の出血を伴って死に至ることも多い。瘤(こぶ)が小さい初期は無症状で経過するが、拡大すると腹部の膨満感の訴えに始まり拍動性の腫瘤(しゅりゅう)として発見される。拡大傾向にある大動脈瘤に対して、進行を抑えることのできる薬物などによる治療法はまだ確立されていない。さらに拡大すると周辺臓器を圧迫し神経障害や呼吸障害などを伴い、腹部のほか背部などに疼痛(とうつう)をきたすようになる。この段階では瘤壁からの出血もみられ、瘤の横径が70ミリメートル以上になると破裂の危険性が増大する。拡大傾向が著しい場合は、50ミリメートルを超えた段階で外科的手術の対象とされることが多く、日本循環器学会の「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」においてもこの基準が示されている。手術は、動脈瘤を切除し人工血管によって置換して修復する血管置換術や、経皮的にカテーテルを挿入し動脈内にステントを留置して新しい血流路をつくり、動脈瘤の血流を断って拡大防止を図るステントグラフト内挿術が選択される。[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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