日本大百科全書(ニッポニカ) 「カテプシン」の意味・わかりやすい解説
カテプシン
かてぷしん
cathepsin
動物の細胞内、とくにリソゾーム内に蓄えられているタンパク質分解酵素群の総称。動物が死んでしばらくたつと組織の融解がおこるが、これは、細胞内にあって生きているときにはむやみに作用しないように制御されていたタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が、制御を解かれて作用しだすからである。消化管内や血液中のタンパク質分解酵素に比べて研究が遅れていたが、その重要性が急速に明らかになってきた。以前は一つの酵素と思われていたが、いまでは多種多様の酵素が存在することがわかり、A、B、Cなどと区別されている。したがって、カテプシンということばを厳密に定義することはむずかしい。リソゾームは細胞外から取り込んだタンパク質などを消化するための細胞内小器官で、ここに閉じ込められているカテプシン類は、正常時には自分の細胞や組織を攻撃することはない。しかし、細胞が死ぬとリソゾームの膜が壊れ、カテプシンが細胞質に漏れ出るので、細胞が壊れるのである。リソゾームの内部は、細胞質よりも水素イオン濃度(pH)がすこし低いので、カテプシン類の最適pHは5~6のものが多い。また、活性部位にSH基をもつ酵素が多いのも特徴である。
[笠井献一]