至・到(読み)いたる

精選版 日本国語大辞典の解説

いた・る【至・到】

〘自ラ五(四)〙 (他動詞「いたす(致)」に対する自動詞形という)
① 物事がある点から出発して、他の点まで達する。
(イ) ある場所に行き着く。到着する。
※古事記(712)中・歌謡「百(もも)伝ふ 角鹿(つぬが)の蟹(かに) 横去らふ 何処(いづく)に伊多流(イタル)
※万葉(8C後)一四・三四四一「ま遠くの雲居に見ゆる妹が家(へ)にいつか伊多良(イタラ)む歩めあが駒」
(ロ) ある時点に達する。ある時期、時節になる。
※万葉(8C後)一七・四〇一一「露霜の 秋に伊多礼(イタレ)ば」
(ハ) ある地位に達する。
※平治(1220頃か)上「わづかに従三位までこそいたりしか」
(ニ) ついに、ある状態になる。ある段階、時機などに達する。
※日葡辞書(1603‐04)「ハンジャウノ トキ itatta(イタッタ)
※文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉三「他をして之(これ)を羨ましむるに至る可(べ)し」
② 物事の限界、極点に達する。
(イ) (多く「にいたるまで」の形で) 物事の両極、または一方の極をあげて、その範囲、限界などを示す。
※万葉(8C後)三・四二〇「天雲の そくへのきはみ 天地(あめつち)の 至流(いたれル)までに」
※古今(905‐914)仮名序「梅(むめ)をかざすよりはじめて〈略〉雪を見るにいたるまで」
(ロ) (多く「いたれる」「いたりたる」の形で) 極点に達する。このうえない状態になる。きわめる。→至りて至って
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「至(イタ)りたる理」
※大鏡(12C前)六「これは徳いたりたる翁共にて候」
※日葡辞書(1603‐04)「ゼン、または、ガクモンニ itatta(イタッタ)ヒト」
③ 広くゆきわたる。特に、注意などがすみずみまで届く。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)三「嘉(よ)き名普く曁(イタ)り、衆に欽仰(せ)られむ」
※蜻蛉(974頃)上「いたらぬところなしと聞きふるしたる手も」
④ 事物や人、また、新しい事態、時期などが自分の方へやってくる。
※落窪(10C後)一「此時ぬす人いたらんやは。男にこそおはすらめ」
※平家(13C前)五「時にいたって行なはざれば」
⑤ ある事の結果、そうなる。
※義経記(室町中か)六「それは臆病のいたるところぞ」
⑥ (「にいたりては」「にいたっては」の形で) 事柄をいくつかあげ、最後に、強調したいものとして、ある事柄を特にとりあげる表現。…ということになる。…に話が及ぶ。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)一〇「聖主光廻らしたまふが若(ごと)きに至ては、三蔵に之を備へたり」
※方丈記(1212)「水、火、風はつねに害をなせど、大地にいたりてはことなる変をなさず」
⑦ 粋になる。上品になる。
※評判記・役者評判蚰蜒(1674)藤田小平次「らしやの羽織に四方かみといたりにいたる」
⑧ 惜しまないで費用をかけるようになる。はでになる。
※浮世草子・渡世身持談義(1735)一「昨日迄正月買と至(イタ)りし大尽(だいじん)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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