改訂新版 世界大百科事典 「興行場法」の意味・わかりやすい解説
興行場法 (こうぎょうじょうほう)
公衆衛生の見地から興行場に対する規制を定めた法律(1948公布)。興行場とは,映画,演劇,音楽,スポーツ,演芸または観せ物を,公衆に見せたり聞かせたりする施設(映画館,劇場,音楽堂,野球場その他の運動競技場,演芸場および観せ物場)をいい,各種展覧会,公営の動植物園,博物館等は含まれない。第2次大戦前,興行場に対する規制は,公衆衛生のみならず風紀や保安も含めた行政警察的見地から,警察命令に基づき各都道府県がそれぞれ行っていたが,戦後は新憲法の趣旨をふまえ,こうした規制は法律で行うべきであるとの観点から,本法が制定され,もっぱら公衆衛生上の見地からその規制を定めることとなった。もっとも,別途,軽犯罪法・警察官職務執行法・消防法等に基づく警察・消防上の規制が行われている。本法によれば,業として興行場を経営しようとする者は知事の許可を受けなければならず,知事は,興行場の設備等が条例で定める公衆衛生上の基準に適合しないと認めるときは,理由を付した書面を添えて不許可とすることができる。次に,営業者は,換気,照明,防湿,清潔その他入場者の衛生に必要な措置(その具体的基準は都道府県条例によって定められている)を講じなければならず,営業者がこれに違反した場合,知事は,行政手続法に基づく聴聞を経たうえで,許可を取り消しまたは営業の停止を命じることができる。以上のほか,本法には,関係者から報告を徴する権限や,興行場への立入調査の権限,無許可営業など本法に違反した場合の罰則等が定められている。
執筆者:晴山 一穂
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報