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舞台照明 ぶたいしょうめいstage lighting

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

舞台照明
ぶたいしょうめい
stage lighting

観客が舞台を見るに十分な明るさを与えるための照明と,舞台上の人物の心理や劇的状況の転換などを表現するための効果としての照明とがある。野外舞台が屋内舞台へと変化 (西欧では 17世紀頃) したのに伴って,初めはろうそくやランプが用いられていたが,19世紀以後,ガス灯アーク灯ライムライト電灯,ケイ光灯と舞台照明も急速に発達した。光の明暗の自由な調節を可能にする照明機器も開発され,演技や演出にも変化をもたらした。照明の種類には,フットライトスポットライトホリゾントライトなどがあり,溶明溶暗暗転などの技術を用いて,いろいろな照明効果が可能になった。歌舞伎の面 (つら) あかりも照明の一つの技術といえる。

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デジタル大辞泉の解説

ぶたい‐しょうめい〔‐セウメイ〕【舞台照明】

舞台演出を効果的にするために用いる照明。

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百科事典マイペディアの解説

舞台照明【ぶたいしょうめい】

舞台美術の一要素。光により演出・演技の効果を助ける方法。古代から近世までの演劇上演は一般に昼間を原則とし,篝火(かがりび)や歌舞伎の面明(つらあかり)(差出し)などの例外もあるが,もっぱらせりふによる情景描写で済ませていた。
→関連項目演出

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世界大百科事典 第2版の解説

ぶたいしょうめい【舞台照明】


[舞台照明の役割とその歴史
 舞台照明とは光をもって劇芸術の創造に参加することをいう。劇芸術には,演技者音楽家舞踊家など,舞台に出演する人たちのほかに,舞台装置,舞台照明,舞台衣裳,音響効果など,スタッフとよばれるさまざまな仕事がある。作家や画家のような個人芸術家とちがって,ふつうこのようなスタッフはすべて演出家の意図を実現するために協同して仕事をしなければならない。日本の伝統芸能(歌舞伎,能)のように演出家がいない場合は,歴史と経験のなかで練磨された伝承のやり方に従い,個々のスタッフがばらばらに,恣意的な創意を加えるべきではないだろう。

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大辞林 第三版の解説

ぶたいしょうめい【舞台照明】

舞台上の光の効果。舞台配光。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

舞台照明
ぶたいしょうめい

舞台照明とは舞台上のあらゆる光の効果をいい、演劇・舞踊・音楽などをはじめ各種催し物のすべての光を扱う仕事であり、今後もますます発展する光の総合芸術分野である。基本的には人工照明により物を見やすくする技術で、光の明暗、光の方向、光の変化、光の色彩、光と影による光の配置を基礎とする。舞台芸術は、台本・演出・演技という主体的な要素と装置・音楽・衣装・音響効果などの副次的な要素からなるが、舞台照明はそれらすべての要素と有機的に関連し表現されたときに光の芸術としての特性が発揮される性質のものである。舞台照明は演劇照明、音楽照明、舞踊照明に大別され、各ジャンルの演出や演技のスタイルにより照明技法が異なる。
 演劇の初期においては演技は屋外の昼光の下で行われた。しかし、舞台が徐々に屋内に移っていくにつれて、人工的な舞台照明の必要性が増していった。初期の人工光源には油灯、ろうそく、石油ランプ、ガス灯などがあったが、これらはただ舞台を明るくするという目的であり、ときには舞台より客席にガス灯が点灯されて話題になったりもした。歌舞伎(かぶき)ではろうそくによる「いざり灯(とう)」(現在のフットライト)、差出(さしだ)しともいう「面明(つらあか)り」(現在のスポットライト)、「るり灯(とう)」(現在のステージライト)などである。1878年イギリスのスワン、その翌年アメリカのエジソンが炭素電球を発明したときから近代の舞台照明が始まる。1920年ごろに舞台美術の視野から照明の重要な役割を提唱したのは、スイスのA・アッピアとイギリスのG・クレイグである。照明の発達は光源、照明機器の発達と不可分である。光源はアーク灯、タングステン・ランプ、ハロゲン・ランプ、キセノン・ランプへと発展し、調光装置は金属抵抗式、変圧器式、真空管式を経てエレクトロニクスの発達に伴い半導体を利用したサイリスタ式となった。今日ではバリライトやレーザーライトの登場により複雑多様な照明が可能となった。
 舞台照明は光によって空間と時間を造形するが、いずれも人間の視覚によって感受される。〔1〕明暗 光の適度な明るさは観客に華やかな気分をもたせるが、暗い照明は観客を疲労させ不快感を与える。一般に舞台では200ルクスから3000ルクスの広い範囲で使用するが、必要な照度の値は上演される催し物の目的による。〔2〕光と影 物体に立体感を与え陰影を鮮明にする本影と半影があり、光の造形に欠くことができない。〔3〕光の方向 光源から照射される光の方向で、対象物に対しての光源の角度をいう。季節・時刻・方位によって自然光線の効果を暗示する場合と、下光・側光・斜光・上光・背光により人物を立体的に表現する場合がある。〔4〕光の変化 情景と時間の経過や変化、また現実から幻想などへと一瞬に変えることができるので、舞台照明の最大特性といえる。特殊効果器具の使用を含めおもに調光装置dimmer machineの操作で行う。〔5〕光の色彩 一般にカラー・フィルターを使用するが、これはアセテートとポリエステルが原材料で50~60色ある。色彩の基準はマンセル記号によるが、あくまで舞台照明独自のものである。
 実際的な舞台照明の仕事のシステムは、照明設計者(プランナー)と操作者(オペレーター)との協同作業で行う。演劇照明では、プランナーは台本を読んでイメージ・プランを考え、稽古(けいこ)中の演技者の動きをメモして、演出者の指示に従い各場面仕込図や総合仕込図などのデスク・プランをたてる。音楽照明では、オペラやミュージカルは台本と楽譜により演劇と同様の作業を行うが、コンサートの場合は、プランナーはセット・プランで仕込図を計画し、リハーサルで照明のきっかけなど時間的な変化を図表化したキュー・シートcue seatやデータを作成する。舞踊照明では振付師との打合せにより計画する。オペレーターの仕事は器具の配置、調光卓の操作、人物のフォローなど、プランナーとの相互の完全な理解と融合が必要である。いずれの照明も舞台稽古によってオペレーターが上演用のデータを記録する。
 欧米ではオペラ、バレエ、演劇などの専門劇場に分別されるが、わが国では歌舞伎、文楽、能を除いて専門劇場が少なく、多目的ホールと称する特殊な形態となっているために照明設備が一定せず、多種多様な器具の操作の技術をはじめ、時間や経済の制約にもかかわらず国際的に高い技術水準を保っている。照明設備は電源と照明器具と調光装置からなる。照明器具の配置は基本的に舞台上部、床部、幕前のエリアとなる。その用途に応じて基本的に、均等な光を与えるフラッドライトfloodlightと、集光した光を与えるスポットライトspotlightの二つがある。プロセニアム劇場(額縁舞台をもつ劇場)の場合、舞台上部前方よりプロセニアムライトprosceniumlight、舞台全面照射のボーダーライトborderlight、立体的な光を造形するサスペンションライトsuspensionlight、多様な色彩のアッパー・ホリゾントライトupper horizontlightなどをつり下げる。床部にはフットライトfootlight、側方光線のタワーライトtowerlight、ステージ・スポットライトstage spotlight、ホリゾント専用のロアー・ホリゾントライトlower horizontlightなどを置く。幕前には客席側面のフロントライトfrontlight、天井からのシーリングライトceilinglight、演技者をフォローするセンターライトcenterlightなどを設置する。円形劇場や野外劇場では設備は多少異なる。[牛丸光生]
『穴沢喜美男著『舞台照明の仕事』(1953・未来社) ▽牛丸光生著『やさしい舞台照明入門part1、part2』(1975、80・レクラム社) ▽遠山静雄著『舞台照明とその周辺』(1986・島津書房)』

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世界大百科事典内の舞台照明の言及

【劇場】より

…現代においては,客席が舞台を完全に囲むいわゆる円形劇場や,演技空間と客席とが同一の空間になっている劇場が再評価されているが,この傾向の背後にあるのは,演劇を単に現実の記号としてとらえ,現に存在している観客を無視するというやり方に反省を加えて,演劇を自律的なものとしてとらえ直そうとする考え方である。 2種類の舞台の違いは,劇の表現手段のうち俳優の演技以外のもの,特に舞台装置や舞台照明のような視覚的手段のあり方の違いにも関連がある。一般に,額縁舞台では精巧な装置が用いられるのに対して,張出舞台では装置は象徴的になったり,簡略化されたり,あるいはまったく用いられなかったりする傾向がある。…

【第四の壁】より

…(2)箱型装置の使用 19世紀半ばから舞台上の部屋は三方を壁で囲まれた上に天井のついたものとなり,〈第四の壁〉の想定が自然にできるようになった。(3)舞台照明の変革 観客世界を無にするには暗い客席のほうが有利だが,1810年代のガス灯照明の始まりでこれがかなり可能となり,1880年代に一般的となった電気照明によって完全に客席を闇に沈められるようになった。したがって〈第四の壁〉の完全な成立は近代劇の確立と期を同じくしたが,現代演劇は再びこの壁を崩して,舞台と客席の境をあいまいにしたり,イリュージョンを排したりするものが多くなっている。…

【舞台美術】より

… しかし,舞台美術が絵画や彫刻と違う点の一つは,時間の要素が加わっているところである。朝から夜まで,あるいは月日の経過,場所の変化や移動などが,舞台の進行とともに,舞台照明の変化や舞台装置の移動,場面転換などによって表現される。また,絵画や彫刻がそれ自体で独立しているのにくらべて,舞台美術は演劇を構成する戯曲,演出,俳優の演技,照明,音楽,音響効果などのさまざまな分野とかかわり合いながら成り立っている。…

【ホリゾント】より

…これをルントホリゾントRundhorizont,さらに上部がドームのように湾曲したものをクッペルホリゾントKuppelhorizontと呼んでいる。漆喰(しつくい)やコンクリートの壁面として舞台に固定されたホリゾントもあるが,舞台装置や舞台照明プランによっては不必要な場合もあるので,布を金属のパイプに張り,舞台上部へつり上げるなど移動可能に設備されたものが多い。最近ではエフェクトマシン,スライドプロジェクターなど照明器材の発達により,夕焼けや嵐をはじめさまざまな空の写実的情景はもちろん,火炎や洪水の特種効果,心理的・抽象的な表現にいたるまで効力を発揮することになった。…

※「舞台照明」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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