文書、書籍、器物などに芸術的な味わいを施すために用いられる飾り文字または装飾頭(かしら)文字。イニシアル(頭文字)の一種。一般の字より際だって大きく、それに加えて、飾り枠に囲われていたり、綯(な)い縄や蔦(つた)がらみや縁どりなどをした飾り書体であったり、それらの組合せであったり、植物、動物、人物、劇的場面など、文字以外の図柄が添えてあったりする。表題や看板でもない限り、各一段落の文字列の最初の一字(イニシアル)にしか用いられないが、その字丈(ゲージ)で数行を占める。なお、物品の持ち主や贈り主を示す頭文字などにもそれだけで用いられることがある。
花文字は、古代ヨーロッパの写本にすでにみられるが、キリスト教がケルト民族やゲルマン民族まで行き渡った中世に、修道院でつくられた聖書の写本を中心に用いられ、それにはギリシアやローマの図柄とともに各地の民俗的装飾文様なども取り込まれて発達し、精巧緻密(ちみつ)で整ったものになった。そこには、「イタロ・サクソン芸術」といわれるものも花開いた。
花文字を書いたカリグラファー(能書家)として、カール大帝の御用画家ゴーテスコルク(8世紀)をはじめ、ザンクト・ガレンの修道院長のサロモン(10世紀)、僧のラートヤン(12世紀)とホーゼマン(13世紀)、尼僧マルガレータ(15世紀)、リンゲルスドルファー(16世紀)らの名があり、聖職者が多かったが、13世紀以来、俗人の間にも花文字を含む筆稿が広がった。中世に教会の権威を飾った手書きの花文字は、近世になると法王の権勢とともに落ち目になったが、その一方で、グーテンベルクの活版術以来、活字のなかに組み込まれた花文字(活字)は、アルファベット一そろいの字母を整えれば足りることもあり、聖俗にかかわらず生き続けてきた。花文字の発達期は、大文字と小文字の使用法および分かち書き法の成立期でもあった。
[日下部文夫]
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