日本大百科全書(ニッポニカ)「花札」の解説
花札
はなふだ
花かるたともいい、欧米のトランプ、中国の麻雀牌(マージャンパイ)と並ぶ日本の代表的なかるた。さいころとともに賭(か)け事の用具としても使用されている。
[倉茂貞助]
歴史
天正(てんしょう)年間(1573~92)オランダの水夫によって長崎に伝えられた「うんすんかるた」からしだいに変化し、江戸末期のころつくられ普及したものである。花札ができるまでは、読みかるた、金吾(きんご)かるた、かぶかるた、めくり札などがあったが、ほかのかるたは廃れ、花札だけが今日なお広く親しまれている。花札という名称は、花の絵模様が描かれているからであろうが、本番と花番、本相撲と花相撲というように、花札の前に流行しためくり札を本札とし、それにかわる花札という意味をとる説もある。花札は48枚で、12か月に分け、絵模様によって札の月別と価値を決めている。花札はうんすんかるたやトランプと札の構成が違い、12種類の札がそれぞれ4枚ずつで、そのなかに不規則に上級の札が配列されているところに特色がある。
[倉茂貞助]
遊び方
「八八(はちはち)」「馬鹿花(ばかっぱな)」「一二三(ひふみ)」「四五六(しごろ)」「猪鹿蝶(いのしかちょう)」「三百けん」「六百けん」「こいこい」「おいちょかぶ」など30種を超える遊び方がある。なかでも「八八」が一般的でもっとも普及している。
[倉茂貞助]
八八
この遊びは普通3人で行う。合計264点の点数を3で割ると88点になるところからこの名称が出ている。勝負に参加する人数は6人以内で、まず親を決め、親が参加者に7枚ずつ配り、「場(ば)」(円陣の中央)に6枚の札をまく。残り札は重ねて伏せて置く。参加者は、配られた札のよしあしで勝負するか、一定の降り賃を払ってやめる(落ちる)かは自由。ただし親から順に3人が勝負をやめないときは、他の参加者は勝負を降りる。各回の勝負は3人または2人で争う。方法は、親から順に自分の持ち札1枚を場に出し、さらに場に伏せたまま重ねて置いてある残り札を1枚めくり、ともに場にある同じ絵模様の札とあわせてとる。あわせる札がないときは、札を出すだけである。これを、持ち札が全部なくなるまで繰り返したのち、各人がとった札の点数を計算し、3人の場合は88点を差し引いた残りが、2人の場合は2人の点数の差が勝ち点となる。これを12回行う。
八八には、とった点数のほかに、配られた札のなかにできる手役(てやく)、勝負でとった札のなかにできる出来役の2種類の役がある。手役は、三本、赤、短(たん)一、十(と)一、光(ぴか)一など12種類で、二つの手役が組み合わされているのをかさね手役といい31種類ある。出来役は、四光(しこう)、五光、雨入四光、赤短、青短、素(す)十六など15種類ある。勝負の途中で出来役ができたときは、ただちに勝負を打ち切ることができ、その場合は手役と出来役の点数を計算する。出来役ができても勝負を打ち切らず続ける場合、その後にほかの人に出来役ができて勝負を打ち切られると、前の出来役は自分の減点となる。手役と出来役の点数は、地方によって多少違うが、勝負を始める前に参加者の間で決めておけばよい。
[倉茂貞助]
おいちょかぶ
花札を使用する代表的な賭け事。花札ができる前は、「かぶかるた」という賭け事専用の札が使われていた。花札のうち雨と桐8枚を除いた40枚を使う。胴と客(親と子)に分かれ、胴は客の前に張り札として3ないし5枚の札を表を出して並べ、自分は伏せて1枚の札をとる。客は張り札を見て思い思いに金銭を賭ける。胴はさらに1枚ずつ、客が金銭を賭けているところは伏せて配り、金銭を賭けられてないところは表を出して配り、自分も伏せたまま1枚をとる。そこで胴と客とが勝負になる。2枚の札の月数の合計から10またはその倍数を差し引いて残りが9となるのを最高とする。ただ点数が6以下のときは、さらに1枚の札をもらうことができ、3枚の合計点で計算する。勝負の結果、胴が勝てば客の賭け金をとり、負ければ客の賭け金と同額をその客に支払う。おいちょかぶは点数の読み方が独特で、8をオイチョ、9をカブというところから「おいちょかぶ」の名称が出ている。
花札には「がんをつける」といって、いかさまの細工を施してある札がある。「そぐり札」「毛入りがん」「あつうす札」「ざらすべ札」「長札」「広札」「しみがん」などがあり、よほど注意して見なければわからないほど精巧にできている。
[倉茂貞助]