英彦山(一一九九・六メートル)の北西麓に鎮座する。祭神は天忍穂耳尊・伊弉諾尊・伊弉冉尊。旧官幣中社。表参道石段の入口に寛永一四年(一六三七)に肥前佐賀藩主鍋島勝茂が寄進した銅鳥居(高さ六・九メートル、国指定重要文化財)があり、石段を登ると左側に雪舟作と伝える旧
開山をはじめとする古代の彦山については史料が少なく多くを縁起類に頼らざるを得ない。現存する当宮のおもな縁起は彦山流記(撰者未詳)、鎮西彦山縁起(祇暁撰)、豊之前州彦山縁起(孤巌撰)の三書である。彦山流記は、原本とみられる高千穂家(現宮司)所蔵本に建保元年(一二一三)七月八日の奥書があることから、最古の縁起とされる。ただし建保改元は一二月六日であるため、紀年には疑問がある。鎮西彦山縁起は元亀三年(一五七二)三月一一日の奥書をもち、原本が高千穂家(ただし前欠)、完全な写本が高田家(現彦山修験道霊泉寺住職)に所蔵され、豊之前州彦山縁起は奥書に元禄七年(一六九四)とみえ、蒲池家所蔵本をはじめとする多くの写本がある。これらの縁起によると、継体天皇二五年に入山した北魏の善正法師に豊後国日田郡の藤原恒雄が遭遇し、忍辱と名を改め、善正が持参した神像を祀った。あるいは甲寅年(五三四)に彦山権現が中国天台山の王子晋の旧跡を経て彦山に登り、地主神が当山を彦山権現に譲ったなどという仏教伝承もある。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
福岡県田川郡添田町英彦山に鎮座。古くは日子山とも記し,祭神は天照大神の子天忍骨尊(天忍穂耳命の別名)で伊佐奈伎尊,伊佐奈美尊を相殿にまつる。《延喜式》神名帳にみえる忍骨命神社がこれにあたるともいわれる。《彦山流記》(1213年成立)によれば三神は英彦山山頂の三岳に天降るとし,本地仏には,釈迦,弥陀,不動が当てられ,継体25年猟師藤原恒雄が山を開き,のちに僧法蓮が法統をついだと伝える。822年(弘仁13)に天台宗彦山霊仙寺が建立されている。919年(延喜19)豊前守惟房の奉幣や,1062年(康平5)源頼義の安倍貞任鎮定祈願があり,また1094年(嘉保1)には大宰大弐藤原長房が彦山の衆徒の蜂起により逐電するという事件もおきている。平安末期には彦山は新熊野(いまくまの)社領となり熊野修験が入った。盛時は周辺霊山を含め四十九窟の霊場をつくり3800坊を有し西国修験道場の中心といわれた。鎌倉末期法親王が座主に入って以後妻帯して子孫に世襲され,明治以後は宮司となった。天正年間(1573-92)に大友宗麟に焼かれ,豊臣秀吉の九州征伐以降近世には衰えた。しかし1616年(元和2)奉幣殿が細川忠興によって再興され,その後,霊元上皇より額を賜い,表記は〈英彦山〉に定着した。神仏分離により1868年(明治1)座主以下復飾,神祇官管下に入り,71年国幣小社英彦山神社,97年官幣中社,第2次大戦後神社庁別表神社となり,1975年以降は英彦山神宮と称している。神事に汐井採,御田祭,神幸祭,鉞行事等がある。
執筆者:中野 幡能
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
福岡県田川郡添田(そえだ)町英彦山に鎮座。主神として正哉吾勝々速日天忍穂耳尊(まさやあかちかちはやひあめのおしほみみのみこと)を祀(まつ)る。一名を彦山権現(ひこさんごんげん)ともいう。天忍穂耳尊は天照大御神(あまてらすおおみかみ)の御子で、英彦山に降臨されたことから、日子山(ひこさん)と称する。神武(じんむ)天皇東征に際し、天村雲命(あめのむらくものみこと)を派遣して天忍穂耳尊を鎮祭し、崇神(すじん)天皇41年、英彦山頂に社殿が創建されたと伝える。奈良時代に至り役行者(えんのぎょうじゃ)が来山して修験道(しゅげんどう)の道場をおこし、やがて彦山修験道が形成された。嵯峨(さが)天皇が護国安民の勅願所と定めてより、歴朝の勅願所として隆昌(りゅうしょう)を極め、その神宮寺は霊仙寺(りょうせんじ)と号した。豊臣(とよとみ)秀吉は九州下向に際して彦山権現の隆盛を恐れ、その社領を没収したという。また霊元(れいげん)天皇は彦山に「英」の字を加え、英彦山と改称せしめた。旧官幣中社。奉幣殿(ほうへいでん)、銅(かね)の鳥居は社蔵の修験板笈(いたおい)とともに国指定重要文化財。ほかに霊元天皇宸筆(しんぴつ)、経筒(きょうづつ)、豊臣秀吉書状などがある。例祭日は9月28日。特殊神事として3月15日の御田祭(おんだまつり)、4月14、15日の神幸祭がある。
[二宮正彦]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新