文化財保護法上の「文化財」の一種目。従来「民俗資料」とよんだが、1975年(昭和50)の法改正によって「民俗文化財」と名称が改まり、保護規定も変わった。その定義は同法第2条1項3号に、「衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの」と規定されている。
民俗文化財には「有形民俗文化財」と「無形民俗文化財」とがある。有形の民俗文化財とは、前掲の定義後段に掲げられた衣服、器具、家屋等の物件をさし、文部科学大臣はそのうちとくに重要なものを「重要有形民俗文化財」に指定することができることになっている。無形の民俗文化財とは、前掲の定義前段の風俗慣習、民俗芸能、民俗技術をさし、文部科学大臣はそのうちとくに重要なものを「重要無形民俗文化財」に指定することができることになっている。また、文化庁長官は、重要無形民俗文化財以外の無形の民俗文化財のうちとくに必要なものを選択して、自らその記録を作成し、保存し、または公開することができることになっている(選択無形民俗文化財)。有形・無形の民俗文化財の指定または選択は、それぞれ別個に告示で定められた指定基準または選択基準に照らして適否が判定されるが、決定は文化審議会に諮問し、その議決答申を得たうえで行われる。なお、2004年(平成16)の文化財保護法改正により、重要有形民俗文化財以外の有形民俗文化財のうち、保存と活用がとくに必要とされるものは登録有形民俗文化財として文化財登録原簿に登録されることとなった。2019年(令和1)7月時点で、重要有形民俗文化財221件、重要無形民俗文化財312件が指定されており、登録有形民俗文化財には44件が登録されている。
[田原 久]
『民俗文化財研究会編著『民俗文化財の手びき』(1979・第一法規出版)』▽『『日本の民俗文化――重要無形民俗文化財の世界』(2003・民俗資料編纂会)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…
[文化財の種類]
文化財は人工文化財と自然文化財に大別される。人工文化財はまた,動産文化財,不動産文化財,および無形文化財,民俗文化財に分けられる。(1)動産文化財 彫刻,絵画,書跡,陶磁器,金工品,漆芸品,考古資料などのいわゆる美術工芸品といわれるもの,各種古文書,美的価値よりも学術的価値に重きをおいた地図類や,歴史上の著名な人物の遺品などの歴史史料等からなる。…
※「民俗文化財」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新