日本大百科全書(ニッポニカ) 「菱ニッケル鉱」の意味・わかりやすい解説
菱ニッケル鉱
りょうにっけるこう
gaspéite
方解石のニッケル置換体。方解石系鉱物の一員。菱苦土鉱(マグネサイト)や菱鉄鉱との間で広範囲に固溶体を形成する。自形は菱面体の微細なものが知られている。超塩基性岩に伴われるニッケル硫化物を含む正マグマ性鉱床中に発達する炭酸塩脈中に産し、また再結晶苦灰岩中の含ニッケル硫化物脈の一部にも産する。また地上で風化した隕石(いんせき)中に発達する細脈からも発見されている。日本では愛知県新城(しんしろ)市中宇利鉱山(なかうりこうざん)(閉山)の正マグマ鉱床のニッケル・コバルト硫化物の二次鉱物として含Co変種を産した。
共存鉱物は中宇利鉱山では、マクギネス石mcguinnessite(化学式(Mg,Cu)2[(OH)2|CO3])、ニッケルくじゃく石glaukosphaerite((Cu,Ni)2[(OH)2|CO3])、蛇紋石、ジャムボー石jamborite((Ni2+,Ni3+,Fe)(OH)2(OH,S,H2O))、ヒーズルウッド鉱、コバルトペントランド鉱cobaltpentlandite(CoCo8S8)など。同定はやや黄色味をもつ緑色、あるいはやや青味をもつ緑色の集合。他の鉱物を交えない塊状のものは、方解石系としては最高の硬度4.5~5をもつ。中宇利鉱山のものはCoO含量が高く、この影響で本鉱としては例外的に淡紅色を呈する。英名は原産地カナダ、ケベック州ガスペGaspé半島にちなむ。
[加藤 昭]