日本大百科全書(ニッポニカ) 「蒼鉛タンタル石」の意味・わかりやすい解説
蒼鉛タンタル石
そうえんたんたるせき
bismutotantalite
蒼鉛(ビスマス)およびタンタルを主成分とする複酸化鉱物の一つ。安タンタル石‐セルバンテス石系鉱物の一つ。セルバンテス石は本鉱のアンチモン(Sb)置換体にあたる。系内では本鉱との間に広い幅で固溶系が存在する。自形は短柱状であるが、多く塊状。その形態を記述するのに、鉱物記載には珍しくmisshapen(でき損ない)という形容詞を用いている参考書もある。花崗(かこう)岩質ペグマタイトに産し、日本では福岡県福岡市長垂(ながたれ)のリチウムペグマタイト中から鱗雲母(りんうんも)の集合中に埋没して産する。共存鉱物はほかに石英、曹長石、微斜長石、白雲母、緑柱石、錫石(すずいし)、鉄電気石などがある。
同定は非常に大きい比重による。日本のものは灰色であったが、淡褐、淡灰から暗灰色のものまでさまざまである。条痕(じょうこん)もほぼ同色。少しでも透明な部分があれば金剛光沢を呈し、これが不透明になると亜金属光沢の方向に推移する。顕著ではないが劈開(へきかい)や、裂開がいろいろな方向にあるため、川砂の中から回収されたものの表面を見ると、結晶面とは思えないさまざまな方向の平面が発達していることがある。命名はその化学組成に由来する。
[加藤 昭 2017年8月21日]