蓬莱曲(読み)ホウライキョク

デジタル大辞泉 「蓬莱曲」の意味・読み・例文・類語

ほうらいきょく【蓬莱曲】

北村透谷劇詩。明治24年(1891)刊行

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精選版 日本国語大辞典 「蓬莱曲」の意味・読み・例文・類語

ほうらいきょく【蓬莱曲】

  1. 劇詩。北村透谷作。明治二四年(一八九一)刊。恋人の幻を追って蓬莱山中に入った青年を通し、宗教的懐疑苦悶(くもん)世界を描く。

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改訂新版 世界大百科事典 「蓬莱曲」の意味・わかりやすい解説

蓬萊曲 (ほうらいきょく)

北村透谷の第2詩集。1891年養真堂刊。主人公柳田素雄が,〈牢獄(ひとや)ながらの世は逃げ延びて〉,富士山面影を借りた空想上の山である蓬萊山麓から,蓬萊原へ,さらに山頂へと漂泊の旅を続け,最後に狂死するまでの過程を描く長編劇詩。透谷は,この作品において,大魔王に象徴される世俗的な論理倫理に,素雄の内面を対決させ,その自意識の劇的な葛藤のうちに,自己の近代意識確立の苦闘を反映させたと言える。おもに,バイロンの《マンフレッド》の構想が借りられているが,世界観的な劇詩の試みとして,近代詩の創成期においてばかりでなく,その後においても,他に例を見ない画期的な作品である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蓬莱曲」の意味・わかりやすい解説

蓬莱曲
ほうらいきょく

北村透谷(とうこく)の劇詩。1891年(明治24)5月に、養真堂刊という形で自費出版したもの。蓬莱山つまり富士山の麓(ふもと)・中腹・絶頂を舞台に設定、現世を捨ててここにきた気性鋭い内攻的な青年に、大魔王が自分こそこの世の物質的な繁栄を支配していると同時にその破滅をも支配している、と告げ、自分に服従せよというが、青年はそれを拒み富士山頂で死ぬ。明治浪漫(ろうまん)派初期の主要作の一つ。青年は作者透谷のおもかげを宿している。未完の『蓬莱曲別篇(べつへん)』が付載されていて、そこでは青年の恋人の愛が彼の霊を彼岸(ひがん)での救いに導く。内省する自我意識の苦渋のみごとな表現、熟さぬ韻律をおしての詩的実験、これなりに一種の世界観芸術への試みになっていること、等々のことも注目される。日本近代文学館より復刻本が出ている。

[小田切秀雄]

『『北村透谷詩集』(1975・思潮社)』

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世界大百科事典(旧版)内の蓬莱曲の言及

【ロマン主義】より

…彼はロマン主義の本質を,未知な世界や異常な事物などに対する好奇心などの伝奇性に求めているが,そこから森鷗外元祖説は導かれているのである。これに反対して,勝本清一郎は,〈正統なロマン主義〉の性格が,〈自由を求める精神,形式を破壊する精神,保守的勢力に対して革命的な精神,動的な自己主張の精神〉(〈《文学界》と浪曼主義〉)にあると考え,北村透谷の劇詩《楚囚之詩(そしゆうのし)》(1889)から《蓬萊曲(ほうらいきよく)》(1891)へ展開する過程に,その顕著なあらわれを見ている。この勝本の立場からは,佐藤春夫がロマン的作品として高く評価する鷗外青年期の訳詩集《於母影(おもかげ)》(1889)や小説《舞姫》(1890)は,その静的な形式美,節度,保守,妥協への希求,抒情への傾向において,酷評されざるをえない。…

※「蓬莱曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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