御料所,御蔵入,台所入ともいい,戦国大名や江戸幕府の直轄領をいう。戦国大名領には,大名が家臣である給人(きゆうにん)に与える知行地のほかに,直轄領の蔵入地があり,大名の主要財源となっていた。直轄領には代官をおき,年貢の収納や諸役の徴収をさせていた。個々の大名によって直轄領の規模は異なるが,直轄領を増加させるために他国への侵略を繰り返し,占領地はまず直轄化し,その後に新しい給人に知行地として配分していった。大名は本城に蔵元を置いたほか,支城や各軍事拠点にも御蔵をおいて周辺直轄領の米をそこへ集め,兵粮米とし,下級家臣に禄米として給与もしていた。全国統一を果たした豊臣秀吉も蔵入地の拡大に積極的であり,とくにこれを太閤蔵入地という。徳川氏の江戸幕府になると,蔵入地は天領ともいい,初期の幕府所領700万石のうち300万石は旗本領として直臣団に分与し,蔵入地は約400万石を占めていた。幕府と同じように各大名の藩領にも一定度の蔵入地があって,幕府と同じように藩財政をささえる基盤となっていた。
執筆者:柴辻 俊六
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室町末期以降の領主の直轄領。御蔵入(おくらいり)、台所入、天領などともいう。戦国大名、豊臣(とよとみ)氏や徳川幕府および各藩主は、その所領のうち若干を配下の家臣に給付して給地、給領とするほか、要地を直轄領として支配し、年貢公事(くじ)を直接収取して一家の経済にあてた。その収入は年貢米、金銀、木材、特産品など雑多で、いずれも領主の蔵に納入されることから、この称が生じた。豊臣氏の蔵入地は200万石前後と考えられ、各地の鉱山も含まれていた。徳川幕府は開幕以来、天領の増加を図り、その額は元禄(げんろく)年間(1688~1704)に400万石、1732年(享保17)に451万石に達した。幕府は各地の天領に奉行(ぶぎょう)または郡代、代官を置いて支配させた。
[宮川 満]
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戦国大名・織田氏・豊臣氏・江戸幕府・近世大名らの所領のうち,領主権力が直接支配し,年貢などを収納する直轄領。領主の蔵に直接年貢が収納されるためこの呼称がついた。これに対し,家臣などに与え,その支配を任せた土地を知行地という。豊臣政権では個別の大名領内を含め,全国の要地に蔵入地(太閤蔵入地)を設定。全国統一や朝鮮出兵のための兵粮米などにあてるとともに,全国支配の拠点とした。江戸幕府も全国に400万石以上の蔵入地(幕領)をもち,代官らを派遣して支配にあたった。個別大名領主もそれぞれ蔵入地をもっていたが,家臣へ配分した知行地とくらべて少ない場合が多かった。
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…その全貌は〈慶長三年蔵納目録〉によって概観できる。この統計によれば,山城以下35ヵ国に設置された蔵入地と諸国金銀山の運上および諸役運上金銀と地子から構成されていたが,蔵入地の総額は20万7519石余で,この蔵入高は江戸幕府初政のそれにほぼ見合うものといわれる。次に鉱山の運上は金3397枚余,銀7万9415枚余,諸役運上は金1002枚,銀1万3950枚という膨大なものであった。…
…江戸時代には御料所もしくは御領と呼んだ。1603年(慶長8)に開かれた江戸幕府は,徳川氏の蔵入地(くらいりち)を引き継いで直轄領を形成し,慶長(1596‐1615)末年には200万石程度であったが,諸大名の改易・転封を通じて拡大し,元禄(1688‐1704)末年には400万石を超えた。その後1744年(延享1)に461万石に達して江戸時代のピークを記録したが,やがて漸減に向かい1838年(天保9)には419万石であった。…
…
[村中入会の成立過程]
戦国末~近世初頭の林野利用の状況から村中入会への移行は,林野に対する近世領主権の確立過程で進行する。その過程で領主の打ち出した方策の第1は,地方知行(じかたちぎよう)者の林野に対する知行権を否定し,林野を蔵入地(くらいりち)化する方向をとる。地方知行を与えられていた家臣は,耕地とともに林野を耕地の一部として私的に支配した。…
※「蔵入地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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