切米(読み)キリマイ

デジタル大辞泉 「切米」の意味・読み・例文・類語

きり‐まい【切米】

中世、分納された年貢米
江戸時代幕府・藩が軽輩の士に与えた俸禄米または金銭。春・夏・冬の3期に分けて支給された。

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精選版 日本国語大辞典 「切米」の意味・読み・例文・類語

きり‐まい【切米】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 中世、年貢を一定額で請け負うこと。また、その年貢。
    1. [初出の実例]「金輪院知行分年貢之内、契約切米」(出典:朽木文書‐文明九年(1477)四月二二日・富倉藤久代官職補任状)
  3. 江戸時代、幕府あるいは大名家臣のうち、知行所を与えられていない者に対して、春(二月、年給額の四分の一)、夏(五月、同四分の一)、冬(一〇月、同二分の一)の三季に分割して支給される扶持米、あるいはそれ相当の金銭。また、それを支給すること。特に冬季のものを「切米」といい、その他を「御借米」という場合がある。
    1. [初出の実例]「去年の御切米の残をさへくだされませぬによって、板かへし仕るちからが御ざらぬ」(出典:天理本狂言・太子の手鉾(室町末‐近世初))
  4. ( から転じて ) 一般雇人などの給料。給金
    1. [初出の実例]「年中の御つかひ金として弐百四十両相わたし、京より百両きりまいの御妾女弐人かかへ、此大ぶり袖の腰もとづかひ三人」(出典:浮世草子・万の文反古(1696)一)

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改訂新版 世界大百科事典 「切米」の意味・わかりやすい解説

切米 (きりまい)

江戸時代,給地を持たない武士主君が支給する俸禄米のこと。蔵米ともいう。江戸幕府においては,直属の家臣(旗本御家人)のうちに,知行地を与えられた知行取と,知行地をもたない蔵米取がいたが,後者に与えられたものが切米である。切米の支給は通例,春(2月),夏(5月)に4分の1ずつ,冬(10月)に残りの全部を渡すのを原則とし,このうち春,夏の分を春借米(はるかりまい),夏借米と称し,冬の分を冬切米と呼んだ。切米は,米または貨幣(金)で支払われたが,米と金の比率や,金で支給する場合の換算値段(張紙値段)は,年貢米の収納状況や市中米価の動向を勘案して,そのつど決定された。切米取の武士は切米受取手形書替奉行裏判うけ,これを蔵奉行に示して切米(金)を受け取り,米の場合にはさらに札差を通じて現金に換えて生活費に充てた。諸藩の場合も多くはこれに準じている。なお,転じて民間の奉公人の給米を切米と呼ぶこともあった。
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百科事典マイペディア 「切米」の意味・わかりやすい解説

切米【きりまい】

中世には年貢(ねんぐ)米を分納すること,あるいはその年貢をいう。江戸時代では,将軍・大名が給地を持たない家臣に支給した俸禄(ほうろく)米。蔵米(くらまい)ともいう。知行(ちぎょう)地を与えられた者は知行取とよばれた。切米取への支給は,2月・5月に4分の1ずつ,10月に2分の1と3季に分けて行われるのが通例で,書替奉行の裏判を受けた受取手形を蔵奉行に提示して切米を受け取った。なお米でなく貨幣で支給される場合は市中の米値などを勘案して決められた。切米は札差(ふださし)を通じて現金に換えて生活費に充てた。
→関連項目地方知行

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「切米」の解説

切米
きりまい

蔵米とも。江戸時代,知行地をもたない中・下級の武士に与えられた俸給。幕府の場合,知行所をもたない旗本や御家人に対して浅草御蔵から支給された。切米受取手形を書替奉行(切米手形改役)のもとへ持参して裏判をうけ,これを御蔵へ持参して切米をうけとる。はじめは10月頃から1度に支給されたが,しだいに分割支給となり,夏・冬の2回支給をへて,1723年(享保8)以降は2月に4分の1を春借米,5月に4分の1を夏借米,10月に4分の2を冬切米として年3回の支給になった。現米で渡されるほかに,御張紙値段とよばれる公定米価により換金して支給されることもあった。普通は札差が切米の受渡しを代行した。諸藩の場合もおおよそ幕府の方法に準じていた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「切米」の意味・わかりやすい解説

切米
きりまい

江戸時代の俸禄の一種。幕府の旗本,御家人中,知行所を受けない下級の者および大名の家臣で知行取でない中下級の者が,主君の蔵米のうちから春,夏,冬の3回に分けて与えられたもので,米何石と表現された。春,夏各4分の1を御貸米といい,冬の4分の2を御切米と呼ぶならわしもあった。諸藩にも類似の制度があり,切米取は藩士の身分をも示した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「切米」の解説

切米
きりまい

江戸時代,旗本・御家人・諸藩士に米または金で支給された俸禄
支給をうける武士を切米取(蔵米取)という。幕府の場合,蔵米取は春(2月)・夏(5月)・冬(10月)の年3回扶持米をうけた。そのうち春・夏の分を御貸し米,冬の分を御切米と呼んだ。もと蔵米取は軽輩の御家人に限り,ほかは知行地を与えられる知行取であったが,江戸中期ころから知行取も名目化し蔵米取に移行した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「切米」の意味・わかりやすい解説

切米
きりまい

蔵米

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世界大百科事典(旧版)内の切米の言及

【扶持】より

…戦国時代以前にも,家臣に米を給することを扶持と呼んでいたが,江戸時代に入って制度的に整い,武士1人1日の標準生計費用を米5合と算定して,1ヵ月に1斗5升,1年間に1石8斗,俵に直して米5俵を支給することを一人(いちにん)扶持と呼び,扶持米支給の単位とした。これは知行(ちぎよう)高5石の蔵米取(くらまいとり)御家人が1年間に受け取る切米(きりまい)に相当する。扶持米の支給方法は,切米の支給に準じ,支配頭の裏書奥印のある扶持受取手形を御蔵(おくら)または御金蔵(おかねぐら)(金蔵)に持参して,米または金を受け取った。…

※「切米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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