江戸時代,給地を持たない武士に主君が支給する俸禄米のこと。蔵米ともいう。江戸幕府においては,直属の家臣(旗本,御家人)のうちに,知行地を与えられた知行取と,知行地をもたない蔵米取がいたが,後者に与えられたものが切米である。切米の支給は通例,春(2月),夏(5月)に4分の1ずつ,冬(10月)に残りの全部を渡すのを原則とし,このうち春,夏の分を春借米(はるかりまい),夏借米と称し,冬の分を冬切米と呼んだ。切米は,米または貨幣(金)で支払われたが,米と金の比率や,金で支給する場合の換算値段(張紙値段)は,年貢米の収納状況や市中米価の動向を勘案して,そのつど決定された。切米取の武士は切米受取手形に書替奉行の裏判をうけ,これを蔵奉行に示して切米(金)を受け取り,米の場合にはさらに札差を通じて現金に換えて生活費に充てた。諸藩の場合も多くはこれに準じている。なお,転じて民間の奉公人の給米を切米と呼ぶこともあった。
執筆者:大口 勇次郎
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蔵米とも。江戸時代,知行地をもたない中・下級の武士に与えられた俸給。幕府の場合,知行所をもたない旗本や御家人に対して浅草御蔵から支給された。切米受取手形を書替奉行(切米手形改役)のもとへ持参して裏判をうけ,これを御蔵へ持参して切米をうけとる。はじめは10月頃から1度に支給されたが,しだいに分割支給となり,夏・冬の2回支給をへて,1723年(享保8)以降は2月に4分の1を春借米,5月に4分の1を夏借米,10月に4分の2を冬切米として年3回の支給になった。現米で渡されるほかに,御張紙値段とよばれる公定米価により換金して支給されることもあった。普通は札差が切米の受渡しを代行した。諸藩の場合もおおよそ幕府の方法に準じていた。
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…戦国時代以前にも,家臣に米を給することを扶持と呼んでいたが,江戸時代に入って制度的に整い,武士1人1日の標準生計費用を米5合と算定して,1ヵ月に1斗5升,1年間に1石8斗,俵に直して米5俵を支給することを一人(いちにん)扶持と呼び,扶持米支給の単位とした。これは知行(ちぎよう)高5石の蔵米取(くらまいとり)御家人が1年間に受け取る切米(きりまい)に相当する。扶持米の支給方法は,切米の支給に準じ,支配頭の裏書奥印のある扶持受取手形を御蔵(おくら)または御金蔵(おかねぐら)(金蔵)に持参して,米または金を受け取った。…
※「切米」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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