江戸期に刊行された最初の蘭語学入門書。大槻玄沢(おおつきげんたく)著。1788年(天明8)刊,2巻。江戸蘭学勃興期に前野良沢についてオランダ語を修めた玄沢が,1785-86年の長崎遊学後に,オランダの原書について蘭学を学ぼうとする学徒のため,蘭語学の基本的事項や学習方法について初心者向きにまとめたのが本書で,広く普及し版を重ねたので異版がある。初版刊行に当たっては,蘭癖大名で蘭学者のパトロンとして知られる福知山藩主朽木昌綱(くつきまさつな)の出版助成を受けている。玄沢の蘭語学学習法は,青木昆陽がひいた基本線を前野良沢が受け継ぎ,それを玄沢が引き継いだ形で行われ,蘭文法と漢文法の類似点に着目し,漢文直読法でない漢文訓読法による漢文学習法が蘭語学の学習に応用され,良沢の著した蘭語学書《和蘭(オランダ)訳文略》《蘭訳筌(せん)》ほかが,随所に利用されている。ただし上巻は蘭語学習には直接関係ない蘭学発達小史で,いわば杉田玄白の《蘭学事始》の簡約版である。
執筆者:宗田 一
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蘭学の入門書。大槻玄沢(おおつきげんたく)の著。1783年(天明3)玄沢27歳のとき成稿、1788年刊行。上下二巻。蘭学を規定した例言に続いて、上巻は9章からなり、日本・オランダ関係の歴史、蘭学研究の意義と発達の歴史をまとめた総論とし、下巻は16章からなり、ABCの文字から数字、発音、訳法、文法を具体的にかつ簡単に説いたオランダ語への入門書となし、単語、訳例をあげ、冠詞など数種の品詞や文章記号を解説し、参考となる輸入文献を掲げ、学訓を示して結んでいる。出版された蘭学入門書の最初で、江戸時代を通じ蘭学に手を染める者の間に普及し、その影響はすこぶる大きかった。
[片桐一男]
『国書刊行会編・刊『文明源流叢書1』(1913)』▽『松村明校注『日本思想大系64 洋学 上』(1976・岩波書店)』
大槻玄沢(おおつきげんたく)が著した蘭学入門書。2巻。1788年(天明8)刊。上巻には朽木昌綱・萩野信敏の序文があり,総説・通商・裨益・精詳・慕効・興学・立成・禦侮・勧戒の章からなる。日蘭交渉,渡来物産,諸科学,蘭学の首唱,前野良沢の蘭学研究の苦心や蘭学のすすめなどを説く。下巻は文字・数量・配韻・比音・訓詁・転釈・修学・訳辞・訳章・釈義・類語・成語付訓点並ニ訳文・助語・点例・書籍・学訓の章からなる。オランダ語学習法,訳文作成までの方法,単語・文例の説明,助語や句切り符号の説明,舶来書籍名,蘭学学習一般に関する注意などを説く。巻末に宇田川玄随(げんずい)・桂川甫周(ほしゅう)の跋文を付す。まとまった最初の蘭学入門書として大きな影響を及ぼした。「日本思想大系」所収。
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