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江戸後期の大名。丹波(たんば)国(京都府)福知山(ふくちやま)藩主。龍橋(りゅうきょう)と号し、隠岐守(おきのかみ)、左門と称した。蘭学者(らんがくしゃ)、古銭の研究家として著名。前野良沢(りょうたく)に蘭学を学び、杉田玄白(げんぱく)、中川淳庵(じゅんあん)、大槻玄沢(おおつきげんたく)、桂川甫周(かつらがわほしゅう)ら初期の蘭学者をはじめ、オランダ商館長ティツィング、デュールコープ、フェイトらとも交わった。ことに玄沢の長崎遊学を支援したことはよく知られている。西洋地理学に専念し、長崎の通詞(つうじ)出身の荒井庄十郎(しょうじゅうろう)とともに『泰西輿地図説(たいせいよちずせつ)』を訳述、刊行。古銭を収集し、自ら『新撰(しんせん)銭譜』『泉貨鑑』『弄銭(ろうせん)奇鑑』を編述し、研究は『西洋銭譜』の刊行にまで及んだ。なお松平不昧(ふまい)公(治郷(はるさと))について石州流茶道を学び、不見庵(あん)宗非と号した。
[片桐一男]
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… 18世紀以降諸藩は教育に力を注ぎ,亀山藩の邁訓(まいきん)堂,園部藩の教先(きよせん)館,綾部藩の進徳館(のちの篤信館),福知山藩の惇明館,山家藩の致道(ちどう)館,篠山藩の振徳堂などの藩校が設けられた。好学の福知山藩主朽木昌綱はオランダ商館長,前野良沢らから蘭学を学び,《泰西輿地図説》《西洋銭譜》などを著している。このほか学者・文化人として,亀山に石門心学の石田梅岩,医師山脇東洋,画師円山応挙,桑田郡より陶工野々村仁清などが出ている。…
…江戸蘭学勃興期に前野良沢についてオランダ語を修めた玄沢が,1785‐86年の長崎遊学後に,オランダの原書について蘭学を学ぼうとする学徒のため,蘭語学の基本的事項や学習方法について初心者向きにまとめたのが本書で,広く普及し版を重ねたので異版がある。初版刊行に当たっては,蘭癖大名で蘭学者のパトロンとして知られる福知山藩主朽木昌綱(くつきまさつな)の出版助成を受けている。玄沢の蘭語学学習法は,青木昆陽がひいた基本線を前野良沢が受け継ぎ,それを玄沢が引き継いだ形で行われ,蘭文法と漢文法の類似点に着目し,漢文直読法でない漢文訓読法による漢文学習法が蘭語学の学習に応用され,良沢の著した蘭語学書《和蘭(オランダ)訳文略》《蘭訳筌(せん)》ほかが,随所に利用されている。…
※「朽木昌綱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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