名詞および名詞として扱われる語と結び付いてその意味を限定し、名詞句を構成する短い語の類。冠詞を欠く言語は多く、その名詞句内の位置についても、名詞に前置される場合と後置される場合(ルーマニア語、ノルド諸語の定冠詞など)がある。冠詞は定冠詞と不定冠詞に下位区分されるが、両者の分布はかならずしも対称ではなく、英語でも不定冠詞は単数(可算)名詞の前にのみおこるが、定冠詞はこの限りでない。このため「ゼロ冠詞」を考える学者もいる。なお、フランス語の「部分冠詞」は部分格小辞と定冠詞の融合形にすぎない。また、定冠詞を有するが不定冠詞を欠く言語は、ヘブライ語など数多い。冠詞の基本的意味はしばしば定性(definiteness)の有(定)無(不定)として論じられ、英語の冠詞についての最近の研究の一つ(Hawkinsによる)は、定冠詞の働きを「話し手と聞き手の共有する種々の知識と発話の場面に規定された何組もの対象のうちの一組の中に名詞句の指し示すものを位置づけよと聞き手に指示する」としているが、まだ十分な解明は行われていない。冠詞の用法は言語によってもかならずしも一様でなく、たとえばブルトン語の(定)冠詞は名詞句の定性と直接には関係せず、名詞句の指示するものが総称的(generic)でなく特定的(specific)であるとき用いられることが報告されている。冠詞のない言語では、定・不定の対立が日本語のは・がの使い分けのように他のさまざまな手段で示される。
[川村三喜男]
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[代名詞]
次に,話し手本人とか話し相手とか第三者を表すのに用いられる単語,あるいはそれらに加えて,その事物の本質を捨象して,話し手や話し相手との位置関係等にのみ依拠して事物を表すのに用いられる単語が一つの範疇を形成していることが確認されるならば,それらは〈代名詞〉と呼ばれることが多い。英語などにおいては,そういう内容を表す単語は,普通の名詞にはつくことのできる冠詞が決してつかないとかいった,表すものの特殊性では完全には説明しきれない機能上の特殊性があるので,少なくとも普通の名詞とは文法的に区別されている(ただし,名詞との機能上の共通性も顕著であるので,おそらく,別の品詞というより,同一の品詞の異なる下位範疇を形成している,とすべきであろう)が,日本語の場合,俗に代名詞と呼ばれるものは,表すものは他の名詞に比して特殊に思われても,その機能には特殊性は認められそうになく,仮にあってもそれは表すものの性格によると考えられるので,名詞に所属するだけで,その中の下位範疇を(すら)形成していないと思われる。
[動詞]
ある品詞に属する単語の多数が運動・動作といったものを表す場合,その品詞は一般に〈動詞〉と呼ばれる。…
※「冠詞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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