蝙蝠傘(読み)こうもりがさ

精選版 日本国語大辞典 「蝙蝠傘」の意味・読み・例文・類語

こうもり‐がさ かうもり‥【蝙蝠傘】

〘名〙 (ひろげたとき、蝙蝠の翼をひろげた形に似ているところからいう) 西洋から伝わった雨よけ、または日よけの傘。鉄の骨に、布を張って、金属、竹、木などの柄をつけたもの。こうもり洋傘
航米日録(1860)五「道路往行には、男女皆蝙蝠傘を擕ふ、女の用ふるは極めて小にして、僅に日光を遮るのみ」

かわほり‐がさ かはほり‥【蝙蝠傘】

〘名〙 こうもりがさのこと。明治時代に使われた。かわほり。
※別れ霜(1892)〈樋口一葉〉七「折しも降りしきる雪に、お高洋傘(カハホリガサ)を傾けて」

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デジタル大辞泉 「蝙蝠傘」の意味・読み・例文・類語

こうもり‐がさ〔かうもり‐〕【蝙蝠傘】

《広げた形がコウモリの翼の形に似ているところから》金属製の骨に布などを張った傘。洋傘。こうもり。
[類語]洋傘唐傘番傘蛇の目傘雨傘日傘パラソル

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改訂新版 世界大百科事典 「蝙蝠傘」の意味・わかりやすい解説

蝙蝠傘 (こうもりがさ)

金属の骨に布を張った傘。開いた形がコウモリの飛ぶ姿に似ているので,明治初年にこの名がついた。竹の骨に紙を張った従来のものと区別するため,西洋傘,洋傘とも呼ばれた。日本にはじめて伝えられたのは1859年(安政6)で,イギリスの商人が持ちこんだといわれ,慶応(1865-68)のころには外国商人が売り出すようになり,武士の間に使う者があらわれた。しかし,攘夷論者には目のかたきにされ,生命を落とした人もあるという話が《福翁自伝》に出ている。やがて文明開化の波にのって洋傘が上流階級にひろまり,72年(明治5)ころには材料を輸入して国内生産が始まると価格も下がって,数年後には一般の人も使用するようになった。87年ころ,溝骨と呼ばれる傘骨の輸入が始まり,90年に溝骨の国産化に成功した。溝骨はそれまでの丸骨にくらべて軽くて丈夫で,安価だったので普及した。洋傘の生産量は1936-37年にピークを迎え,年産1000万本に達したが,第2次大戦中は激減した。戦後洋装が盛んになるにつれて需要も増え,現在の国内生産量は年間4000万本にもなっている。

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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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