雨天に用いる和傘の一種で、多くは女性のさすものである。この傘は、中央と周囲に紺の土佐紙を張り、その中間に白紙を張り巡らすのが特徴で、傘を開くと、太い輪の蛇の目模様が出るところからこの名が生まれた。元禄(げんろく)年間(1688~1704)に番傘を改良して考案されたものである。徳川8代将軍吉宗(よしむね)の時世に、定紋をつけることが起こり、これが女性や通人の間で流行した。渋(しぶ)蛇の目は中央と周囲を渋と「べんがら」を混ぜて塗り、中間を白く抜いたもの、奴(やっこ)蛇の目は周囲だけを薄黒くしたものである。
享保(きょうほう)・元文(げんぶん)(1716~41)のころから、柄(え)を細くした軽い傘が好まれ、のちにはこれを細傘といって腰にさして歩いた。幕末以降、欧米文化がもたらされて、和傘よりもじょうぶな金属骨の洋傘が入ってきてからはあまり使われなくなった。現在では歌舞伎(かぶき)や粋(いき)向きの趣好品と化している。
[遠藤 武]
雨傘の一種。竹の骨に紙を張り,上端を中心に同心円状の模様(蛇の目)を施した日本独特の傘。元禄(1688-1704)のころから作られ,中央と周囲は青土佐紙,中間は白紙張りで,おもに僧侶や医師が用いた。享保(1716-36)時代には,京坂地方で渋蛇の目傘が使われた。これは渋にべんがらを混ぜて上下に塗り,中間に白地を残したもの。江戸では,女子は中間の白地の少ない黒蛇の目傘,男子は紅葉傘と呼ばれる上部青土佐紙,下部白紙張りの上品な傘を用いた。天明(1781-89)のころには細傘,細蛇の目といって,たたむと細くなる傘が流行した。蛇の目傘やそれより粗末な番傘は,昭和20年代まで用いられていたが,現在はほとんど実用にされていない。
執筆者:菊田 隆
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