血液センター(読み)けつえきセンター

精選版 日本国語大辞典 「血液センター」の意味・読み・例文・類語

けつえき‐センター【血液センター】

〘名〙 (センターcenter) 輸血用血液を確保し、その血液の検査及び供給を行なう施設。日本赤十字社血液銀行として設立し、昭和三九年(一九六四)に改称したもの。→血液銀行

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デジタル大辞泉 「血液センター」の意味・読み・例文・類語

けつえき‐センター【血液センター】

輸血用の血液を供血者・献血者より採取して検査・保存管理し、必要に応じて医師・医療機関に供給する施設。日本赤十字社が昭和27年(1952)に創設。

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改訂新版 世界大百科事典 「血液センター」の意味・わかりやすい解説

血液センター (けつえきセンター)

血液を保存し医療機関の求めに応じて血液を供給する組織。以前は血液銀行blood bankと呼ばれた。この種の組織は,1936年にシカゴのクック郡立病院にできたのが最初といわれ,その後急速にアメリカをはじめ世界各地に広まった。

 日本に近代の科学的輸血法が入ってきたのは1919年のことであるが,輸血が社会の関心を呼び,広く行われるようになったのは,1930年浜口雄幸首相が暴漢に撃たれ輸血で一命をとりとめたことが一つの契機になっている。しかし当時の輸血は,採血してそのまま輸血する,いわゆる枕元輸血で,検査や安全性に問題があった。第2次大戦後,日本赤十字社はアメリカ赤十字社の援助を受けて,52年4月に日本赤十字社〈血液銀行〉事業所(現在の日赤中央血液研究所)を設立し,無償で血液を提供する献血を呼びかけた。しかしその1年前に設立されていた民間の商業血液銀行は,買血方式を採用して血液を買ったため,献血の推進は大変困難をきわめた。しかし反復売血する人たちの血液には赤血球が少なく,輸血効果も少ないばかりか,輸血後肝炎などの副作用が大きな社会問題となった。このため買血追放運動が起こり,64年,政府は買血制度による弊害を除き,血液事業の正常化を図るためには,保存血の製造をすべて献血でまかなうことが最善であるとの結論を下し,献血の推進を閣議決定した。この決定にもとづき,国は全国的に献血思想の普及,献血の組織化運動に努め,日本赤十字社も血液銀行の名称を改めて血液センターに統一した。そして献血の受入れ体制として各都道府県に赤十字血液センターが設置されるにつれ体制は急速に整備された。68年ついに民間の血液銀行は買血を中止し,輸血用血液は献血100%の時代を迎えるに至った。

医学の進歩とともに輸血用血液の需要は増大しており,その方法も全血輸血から成分輸血へと変わってきているが,これらの血液は善意の人たちの献血によるものである。血液事業の正常化を図るために生まれた献血制度は当初,血液不足と買血との併存時であったため,献血者が輸血を受けるときには優先還元を行うこととして,献血手帳にその旨を記した預血的な運用によって献血が進められた。しかし82年からこの運用を改め,輸血を必要とする人には,献血手帳の有無にかかわらず,だれでも,いつでも血液の供給を受けられる真の献血制度となった。献血された血液についてはABO式・Rh式血液型検査,不規則抗体スクリーニング,梅毒血清学的検査,肝炎・エイズウイルス検査など,輸血用血液として安全かどうかの検査が行われる。さらにこのほか,献血者の健康管理の一助として,血清トランスアミナーゼ,アルカリホスファターゼ,総タンパク質,尿素窒素コレステロールなどの生化学的検査を行って本人に知らせている。また病人が必要とする血液型の血液を必要なとき,必要量を計画的に確保するため,献血者登録制度もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「血液センター」の意味・わかりやすい解説

血液センター
けつえきせんたー

患者・医療機関と献血者の間にたって、必要な輸血用血液を確保するとともに、その血液を検査し、医療機関の要請に応じて供給する施設をいう。

 血液センターは当初、血液銀行とよばれ、日本赤十字社による創設は1952年(昭和27)であった。当時の血液銀行には民間のものもあり、血液確保の方法はほとんど買血によっていた。やがて買血による弊害が社会問題となり、政府は1964年「献血の推進について」の閣議決定を行い、献血思想の普及と献血受け入れ体制の整備を図ることとした。同年、日本赤十字社の血液銀行は「預血・優先還元」というイメージをなくすため、すべて血液センターと改称され、民間の血液銀行は次々と業務を廃止した。1973年以降、血液確保はすべて献血だけとなったため、現在の輸血用血液の受け入れは日本赤十字社の血液センターのみとなっている(2007年現在66か所)。

 次に血液センターのおもな事業内容を示す。

(1)輸血用血液の確保 血液センターの担当地区内に献血ルームを設置、また、献血協力団体(会社、町会、学校等)を組織し、血液の安定確保を図る。駅前等に献血車を派遣し、広く献血協力を呼びかける。

(2)血液の検査 献血された血液が輸血に支障がないかどうかを検査する(血液型、梅毒血清、HBs抗原、肝機能、HIV抗体等の検査)。さらに、献血者への健康管理の一助としての血液検査(肝機能、総タンパク、コレステロール等の検査)。

(3)血液の調整と供給 献血された血液を医療機関からの依頼に基づき調整製造し、供給する(全血、血小板、赤血球、血漿(けっしょう)製剤等)。

(4)その他 血液に関する調査研究および技術の開発等。

[古谷克己]

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百科事典マイペディア 「血液センター」の意味・わかりやすい解説

血液センター【けつえきセンター】

血液を保存し必要に応じ医療機関に供給する組織。以前は血液銀行と呼ばれた。この種の組織は1936年シカゴのクック郡立病院に設置されて以来世界各国に広まった。日本では1950年ころから普及し,採血及び供血斡旋業取締法(1956年)等の法的規制を受けている。売血は質の低下を免れがたいので1964年の閣議決定を受け献血による保存血液の確保が図られるようになった。現在は各都道府県に赤十字血液センターが整備され,輸血用血液は100%献血による。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「血液センター」の意味・わかりやすい解説

血液センター
けつえきセンター
blood center

血液または血液製剤を得る目的で,健康な供血者から採血し,これに適当な処理を加えて保存し,医療機関の需要に応じてこれを供給する組織。 1936年シカゴのクック・カウンティ・ホスピタルで始められた。日本では 48年に発足し,56年には「採血および供血斡旋業取締法」が公布されて,人血の適性利用,取扱いに付随する保健衛生の管理,被採血者の保護など,医師の管理責任が明確になった。当初は血液銀行と称していたが,64年に現名称に変更された。実務は日本赤十字社が扱っている。血液センターの活動により,売血は姿を消した。

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世界大百科事典(旧版)内の血液センターの言及

【輸血】より

…日本に科学的輸血法が入ったのは1919年で,30年代以後広く行われるようになった。さらに52年には日本赤十字社に〈血液銀行〉事業所が設置され,64年〈血液センター〉に改組され,供給体制が整備された。血液センター
[全血輸血と成分輸血]
 前述のように,かつては輸血といえば全血輸血が行われてきた。…

※「血液センター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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