保存血液(読み)ほぞんけつえき

精選版 日本国語大辞典 「保存血液」の意味・読み・例文・類語

ほぞん‐けつえき【保存血液】

  1. 〘 名詞 〙 血液凝固しないように、クエン酸ソーダなどの抗凝固剤を加え摂氏二~八度の低温のもとに冷蔵した血液。緊急輸血に備えて常時準備してあるもの。約三週間有効。血液センターで扱っている。保存血とも。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「保存血液」の意味・わかりやすい解説

保存血液
ほぞんけつえき

輸血用に採血した血液を3~4週間保存し、必要に応じてすぐに使えるようにしたものをいう。20世紀の初めに輸血療法が始められたころは、血液を保存する方法がなかったため、供血者と受血者の血管の間をチューブで連結して直接に輸血を行っていた。その後、クエン酸ナトリウムが血液の凝固を抑える作用があることが知られ、これを加えて採血し、注射器を用いて間接輸血を行うようになった。さらに抗凝固剤にくふうを加えて、長時間、赤血球機能を失わせないで保存ができるようになった。保存用抗凝固剤にはACD液(クエン酸、クエン酸ナトリウム、ブドウ糖混合液)とACPD液(ACD液にリン酸ナトリウムが加わったもの)とがある。この溶液を血液100ccに25ccの割合で加え、4℃で冷蔵庫に保存すると、ACD液では3週間、ACPD液では4週間使用可能となる。これ以上の期間が経過すると、赤血球の中で解糖作用がすこしずつ進行してくるので、赤血球としての機能が失われてしまう。保存血液をつくる場合、供血者の問診血液検査を厳重に行って、肝炎ウイルス梅毒マラリアなどが入らないようにし、また、器具の汚れから血液に細菌が混入しないように扱いには細心の注意を払い、さらに冷蔵庫の温度はつねに4℃が保たれるように注意する。このように血液の保存ができるようになってからは、献血希望者から随時に採血して保存しておき、必要に応じて希望の型の血液を血液輸送車で送り届け、救急輸血にもまにあわせている。

[伊藤健次郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「保存血液」の意味・わかりやすい解説

保存血液
ほぞんけつえき

輸血用に採取した血液に,赤血球の凝固を防ぐためクエン酸ソーダやその他の薬剤を加え,4~6℃の低温で保存したもの。抗凝固剤を加えて冷蔵しただけの貯蔵血液とは異なる。使用可能期間は 20日前後。血小板と抗血友病因子の活性は採血後 24時間で失われるが,その根拠は,体内に輸注された赤血球の 70%が 24時間後もまだ機能を果しうることからきている。採血してから 72時間以内のものを新鮮血液という。一般の輸血は,入手できるときに採血しておいた保存血液に頼ることが多い。

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