(読み)オクミ

デジタル大辞泉 「衽」の意味・読み・例文・類語

お‐くみ【×衽/×袵】

《「おくび」の音変化》着物左右前身頃まえみごろに縫いつけた、襟からすそまでの細長い半幅はんはばの布。おくび。

お‐くび【×衽/×袵】

《「おおくび(大領)」の音変化》「おくみ(衽)」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「衽」の意味・読み・例文・類語

お‐くみ【衽・袵】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「おおくび(大領)」の転じた「おくび」の変化したもの )
  2. 和服の、左右の前身頃の前襟から裾まで縫いつける、半幅の細長い布。おくび。おおくび。
    1. [初出の実例]「黄昏(たそがれ)いそしむ解衣(ときぎぬ)の衽(オクミ)、下褄(したづま)、膝に乱れ」(出典:塔影(1905)〈河井酔茗〉失せたる針)
  3. 江戸時代、歌舞伎劇場見物席の区切り余りの席。斜めについた花道両側に衽のような形になっている部分。おおくび。
    1. [初出の実例]「大首(オクミ)に居るいなかもの」(出典:滑稽本・戯場粋言幕の外(1806)下)

衽の語誌

→「おおくび(大領)」の語誌


お‐くび【衽】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「おおくび(大領)」の変化した語 ) =おくみ(衽)〔運歩色葉(1548)〕

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普及版 字通 「衽」の読み・字形・画数・意味


9画

[字音] ジン
[字訓] えり・すそ・おくみ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は壬(じん)。壬にふくらむ意がある。〔説文〕八上に「衣の(えり)なり」とあり、衿は襟、衽はおくみをいう。左衽は東夷の俗。中国では死者の礼。〔儀礼、士喪礼〕「衽を奧に(すす)む」、〔中庸、十〕「金革を衽(しとね)とす」のように、衽席の意にも用いる。仁の古い字形は、人の後ろに衽席をおく形で、安舒原義とする字である。〔荘子、達生〕に「人の最も畏るるは、衽席の上、飮なり」とみえる。

[訓義]
1. えり、すそ、おくみ。
2. も、はかま。
3. たもと、そで。
4. しとね、ねむしろ。
5. くさび代りのひも、両端を広くしたひも。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕衽 宇波加比(うはかひ) 〔和名抄〕袵 於保久比(おほくび) 〔字鏡〕衽 コロモノクビ・モノノヲ・ホヒ・モ・オホクビ・ヒモ・ウハカヒ

[語系]
衽・任・妊・恁njimは同声。みなふくよかで安舒の意をもつ語である。

[熟語]
衽褐衽左衽裳・衽席衽髪衽服
[下接語]
臥衽・懐衽・衾衽・交衽・左衽・接衽・続衽・連衽・斂衽

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「衽」の意味・わかりやすい解説


おくみ

袵とも書く。きもの着装上の便から,左右の前身頃の端につけたした半幅の布をいう。衽とはオオクビの転訛語で,クビ (首) は領 (えり) のこと。身頃に大領を加えることによってきものが仕立てられることから大領をつめて衽と称した。

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百科事典マイペディア 「衽」の意味・わかりやすい解説

衽【おくみ】

長着前身ごろの幅を補うために足す半幅(18cm)の布。反物の丈により長方形の棒衽か,衿(えり)付けの縫込み分を削った鉤(かぎ)衽に裁つ。広幅布や子ども物は見せかけだけのつまみ衽にする。

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