左衽(読み)サジン

デジタル大辞泉 「左衽」の意味・読み・例文・類語

さ‐じん【左×衽】

衣服左前に着ること。昔、中国では夷狄いてき風俗とした。

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精選版 日本国語大辞典 「左衽」の意味・読み・例文・類語

さ‐じん【左衽・左袵】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 衣服の右の衽(おくみ)を、左の衽の上に重ねて着ること。ひだりまえ。ひだりえり。〔いろは字(1559)〕 〔書経‐畢命
  3. ( ━する ) ( 中国で、衣服を左前に着るのを夷狄(いてき)習俗としたところから ) 衣服を左前に着て、野蛮人の風俗をすること。また、そのような風俗。蛮人、蛮夷そのものを指すこともある。
    1. [初出の実例]「豈図らむや 左衽の和親の日を 空しく 後宮の寵幸を失はむを〈紀斉名〉」(出典:新撰朗詠集(12C前)下)
    2. [その他の文献]〔論語‐憲問〕
  4. ( から転じて ) 幕末において、西洋人、欧米人をいう。
    1. [初出の実例]「幕府内外の政を輔佐せしめ当に左袵(サジン)の辱めを受ざらしむべし」(出典:近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉二)

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普及版 字通 「左衽」の読み・字形・画数・意味

【左衽】さじん

衣の左前。中国は右衽。左衽は尸衣。〔礼記、喪服大記〕小斂(せうれん)大斂斂葬)には、祭は倒(さかしま)にせず、皆衽(えり)を左にし、(かう)(ひも)を結びて紐せず。斂するに斂するときは、必ず哭す。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「左衽」の意味・わかりやすい解説

左衽
ひだりまえ

上前の衽(おくみ)が左手のほうへくるように重ねて着ること。「さじん」とも読む。現在の女性の洋服の前合わせがこれに当たる。和服の前合わせは、男女とも着物の上前の衽が右手にくるように着る。これは右衽(右前)である。わが国の上代の着装は、埴輪(はにわ)人物像により左衽であったことを知ることができる。また正倉院宝物に左衽の半襞(はんぴ)がみられる。隋(ずい)・唐の文化の移入とともに、衣服も中国のものがそのまま移入された。その着衣は右衽であり、719年(養老3)には前合わせが右衽に統一された。以後和服は右衽(右前)に着衣することが慣習となった。

[藤本やす]

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世界大百科事典(旧版)内の左衽の言及

【襟∥衿】より

…垂領の襟はV字状に交差させ打ち合わせるが,自分からみて左の衽(おくみ)を右の上に重ねる着方を右衽(うじん)(右前ともいう。右手側に衽がくる),その逆を左衽(さじん)(左前)という。古来,中国漢民族の衣服は右衽,周辺の遊牧民族の衣服は左衽であった。…

※「左衽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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